筋電図の読み方

【針筋電図】
1. MUP
MUP=運動単位電位(MU=運動単位)
同期して発生した筋繊維活動電位を加重したもの。
MUPの電位の大きさは神経支配比を表す。(大きな筋では大きなMUP
MUPの数は収縮力を表す。(強い収縮ではたくさんのMUP)
正常のMUP2-3相性の電位で、振幅は数百μV~数mV、持続時間は2-10msec
加齢によって持続時間は延長する傾向がある。


2.観察条件
安静時・随意収縮時(弱収縮)・最大収縮時(最大収縮)の3条件で観察。
観察項目としては波形・持続時間・振幅・放電頻度。

3.安静時
(1)正常筋電図
→刺入電位・終板電位
①刺入電位
正常でも認める。
脱神経や筋炎の時には刺入電位の亢進を認める。


②終板電位
終板付近の生理的現象。


(2)異常筋電図
→陽性棘波(positive sharp wave),繊維自発電位(fibrillation potential),
繊維束攣縮(fasciculation), ミオトニー放電, 奇異高頻度放電
①脱神経所見(denervation potential)
→下位運動ニューロンの障害や筋繊維の変性・壊死で認める。
陽性棘波(positive sharp wave)・繊維自発電位(fibrillation potential)
脱神経により神経終末が消失するとAch受容体が終板外に現れ、Achに対する感受性が上昇する。静止膜電位が低下し、活動電位に達することで筋繊維全体が攣縮する。これがfibrillation potentialであり、活動電位が周辺組織に伝播したものがpositive sharp waveである。脱神経から1-2週間で出現する。
・陽性棘波(positive sharp wave)

・繊維自発電位(fibrillation potential)


posfibの評価
+1:針電極の動きに伴って見られる陽性棘波(厳密には刺入時電位)
+2:筋の2カ所で再現性を認めるが、導出頻度は低い
+3:針電極の位置に関係なくどこでも認める
+4:画面が自発放電で一杯となる

②繊維束攣縮(fasciculation)
一つのMUPの自発放電でありALSでよく観察されるが正常でも認めることがある。肉眼でも観察可能。


③ミオトニー放電
筋強直性筋ジストロフィーや家族性周期性四肢麻痺で認める。スピーカーでは急降下爆撃音が聞こえる。刺入時の過剰な活動電位。
甲状腺機能異常症や各ミオパチー、ALSでも同様の所見を認めることがあるが、偽ミオトニー放電と言われる。筋電図での判別は不可能である。


④奇異高頻度放電
複合反復放電(complex repetitive discharge)とも言われる。様々な筋原性疾患や神経原生疾患で認め得る。ミオトニー放電の一種と考えられている。


4.随意収縮時
(1)正常所見
MUPの波形・持続・振幅で評価を行う。
波形は相(phase)とノッチ(notch)であらわされる。
phaseは基線を超える電位変化であり、超えないのがnotchである。
正常のMUP4相まで。5相以上のMUPpoly-phasic MUPという。
Notchの多いMUPpseudo poly-phasic MUP(鋸歯状活動電位)という。
いずれにせよ多相性のMUPを呈し神経原生・筋原性どちらもありうる。
立ち上がりから基線に戻るまでの持続時間は210msec
振幅は数百μV~数mV

(2)異常所見
①神経原生変化
脱神経後、神経線維の再支配により一つのMUが支配する筋繊維数が増大するため高振幅で持続の長いMUPとなるが、MUPの数は減少する。


②筋原性変化
MUの支配する筋繊維数が減少することにより短時間持続で低振幅のMUPとなる。MUPの数は不変。(short duration and low amplitude=BSAP)


5.最大収縮時
多数のMUが参加することによって生じる干渉波の評価。
①神経原生変化
MUの減少による干渉が不十分な高振幅で持続の長いMUPを呈する。


②筋原性変化
MUの支配する筋繊維数が減少することにより短時間持続で低振幅のMUPとなる。1つのMUの収縮力が小さくなるため、弱い収縮力で干渉波を生じる。
これを早期動員(early recruitment)という。

6.筋電図による鑑別
(1)安静時所見
①異常刺入電位
ミオトニー電位:筋緊張性ジストロフィー・筋強直症ジストロフィー
偽ミオトニー電位:神経原性疾患・筋原性疾患
奇異高頻度放電:神経原性疾患・筋原性疾患
②線維自発電位
神経原性疾患・筋原性疾患
③陽性鋭波
神経原性疾患・筋原性疾患
MUPの自発電位
線維束自発電位:神経原性疾患・健常者
反復電位:ミオキミー・テタニー甲状腺疾患
群化放電:振戦・ミオクローヌス・痙攣
(2)随意収縮時所見
①弱収縮時
MUPの持続時間及び振幅の増加:神経原性疾患
MUPの持続時間及び振幅の減少:筋原性疾患
MUPの多相化:神経原性疾患・筋原性疾患
②最大収縮時
減弱干渉型:神経原性疾患
低振幅スパイク干渉波:筋原性疾患
無活動:神経原性疾患・筋原性疾患

群化放電:パーキンソン病・小脳失調


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