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Trousseau症候群 トルソー症候群

【 Trousseau 症候群】 トルーソー (Trousseau) 症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中を生じる病態である。脳梗塞の成因の多くは DIC に併発した非細菌性血栓性心内膜炎による心原性脳塞栓症と考えられ、原因となる悪性腫瘍は固形癌が多く、その中では婦人科的腫瘍が最も多い。皮質に多発する梗塞が多く、血液凝固マーカーの上昇を認め,原疾患の治療と抗凝固療法が必要となる。 担がん患者における脳梗塞 1) ATI, CE などがんとは無関係の脳梗塞 2)がんに伴う脳梗塞 (2) の診断には (1) の除外が必要である。 (2) がんに伴う脳梗塞 癌組織が凝固因子の一つである組織因子( TF )を発現し凝固亢進状態となる 背景にある癌は腺癌、特に婦人科系癌が多い ①凝固亢進状態による全身血栓症としての脳梗塞 ②非細菌性血栓性心内膜炎( NBTE )による脳塞栓症 ③静脈系血栓による奇異性塞栓症 ④悪性腫瘍に伴う血管炎 の病態が考えられる。 [ 検査 ] 血液検査: Trousseau 症候群では FDP-D の上昇を認める 経食道心エコー検査( TEE ) : PFO の検索、 NBTE の検索 [ 治療 ] ヘパリンが第一選択である 長期化する場合には低分子ヘパリンの皮下注射を選択する。 神経内科の勉強方 おすすめの教科書はこちら 研修医/内科医が読むべき本はこちら 医師の勉強法/持っておくべきものはこちら

DAT-SCAN ダットスキャン

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【 DAT-SPECT 】 黒質線条体ドパミン神経終末に存在する線条体ドパミン神経系の評価 DAT: dopamine transporter ドパミンはシナプス前ではシナプス小胞に包まれ、シナプス間隙に放出される。 ↓ 放出されたドパミンはドパミン受容体に結合し、信号が神経細胞に伝達される。 ↓ シナプス間隙のドパミンは DAT により再取り込みされる ↓ ドパミンは再度シナプス小胞に貯蔵される。 DAT-scan は DAT を反映する検査である *パーキンソン症状をきたす変性疾患では DAT が低下する →パーキンソン病 (PD), 多系統萎縮症 (MSA), 進行性核上性麻痺 (PSP),  大脳皮質基底核変性症 (CBD) では DAT-scan で低下が見られる *脳血管性パーキンソニズム (VP) 、正常圧水頭症 (iNPH) 、 [ 臨床的応用 ] 線条体が障害される PD, MSA, PSP, CBS では取り込み低下を呈する。 (Oh M. J Nucl Med 2012;53:399-406) パーキンソン病では運動症状出現の 10 年前から DAT の現象が始まる。 運動症状出現時には DAT 結合能は 50% 程度まで低下。 (Varrone A. J Nucl Med. 2010;51:1331~1334) PD H-Y Ⅰの正常側でも取り込み低下を認める。 (Marek K.L. Neurology 1996;46:231-237) 本態性振戦、血管性パーキンソニズム、薬剤性パーキンソニズムでは取り込み低下を呈さない。 (Scherefler C. Mod Disord 2007;22:1229-1238) ・正常例 ・集積低下 ・ DAT 低下する疾患 PD :非対称性に被殻後部から集積が低下していく DLB :両側性に高度な集積低下を示すことが多い。 PSP :対称性、びまん性の集積低下を認めるが一定ではない。 MSA :比較的集積は保たれ、左右差を呈することもある。 HD :集積低下は必ずしも高度でない。 神経内科の勉強方 おすすめ

相貌失認

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【相貌失認】 視力や記憶などの機能は 保ったままで相貌失認という特定の症候 街並失認などの病巣が隣接した関連症候を伴って呈することがある。 右紡錘状回が責任病巣と考えられている。 対象を相貌に限定しない視覚性失認としても、 Lisauer において知覚型 ( 統覚 型 )(apperceptive type) と連合型 (asociativetype) に分類されており、それが相貌失認においてもおおむね同様に考えられる。 右側頭葉後方から意味記憶へのアクセスが障害されることでその対象に関する情報が認識できないこともある。 神経内科の勉強方 おすすめの教科書はこちら 研修医/内科医が読むべき本はこちら 医師の勉強法/持っておくべきものはこちら

脳梗塞の分類 TOAST(ATBI, A to A, aortagenic, CE, ESUS, paradoxical, lacunar, BAD)

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【脳卒中の分類】 [TOAST 分類 ] 改訂 TOAST 分類 (SSS-TOAST. 2016) 脳梗塞を 1. large-artery atherosclerosis ( アテローム血栓性脳梗塞 ) 2. cardio-embolism( 心原性脳塞栓症 ) 3. small-vessel occlusion (lacunar: ラクナ梗塞 ) 4. stroke of other determined etiology ( 他の原因による脳梗塞 ) 5. stroke of undetermined etiology ( 原因不明の脳梗塞 = 潜因性脳卒中 ) の5つに分類する。 [NINDS の分類 ] ・   潜在性脳梗塞 cryptogenic stroke 1. ESUS 2014 年に Hart らが embolic stroke of undetermined source (ESUS: 塞栓源不明の脳塞栓症 ) の診断基準を提唱した。 ESUS は TOAST 分類を基に ・   ラクナ梗塞ではない ・   虚血病巣を灌流する頭蓋内・外の血管に 50% 以上の狭窄性病変がない ・   高リスク塞栓源心疾患がない ・   脳梗塞を来す他の特異的な疾患 ( 血管炎・動脈解離など ) がない の 4 項目全てに該当する 場合に診断される。 検査:心電図( Holter 心電図 , 埋め込み型心電計)、心エコー検査 →これらの検査で塞栓源を示唆する所見を認めない場合 ESUS である。 治療:急性期治療、再発予防ともに Etiology undetermined に準じる。 ESUS に対する抗凝固療法の study が多数行われているが結果は出ていない。 現時点では aspirin を用いる。 2. A to A embolism 血管原性塞栓症 大血管のアテローム性病変から塞栓子が生じ抹消の血管を閉塞する。 TOAST 分類では ATBI に分類される。頸動脈エコーや 3D-CTA, MRA(BB 法 ) などが有効である。再発予防は抗血小板薬を用いる。 3.

ESUS, 抗血小板薬と抗凝固療法 Navigate ESUS

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ESUS 2014  年に  Hart  らが  embolic stroke of undetermined source (ESUS:  塞栓源不明の脳塞栓症 ) の診断基準を提唱した。 ESUS  は  TOAST  分類を基に ・    ラクナ梗塞ではない ・    虚血病巣を灌流する頭蓋内・外の血管に 50% 以上の狭窄性病変がない ・    高リスク塞栓源心疾患がない ・    脳梗塞を来す他の特異的な疾患 ( 血管炎・動脈解離など ) がない の 4  項目全てに該当する   場合に診断される。 検査:心電図( Holter 心電図 ,  埋め込み型心電計)、心エコー検査 →これらの検査で塞栓源を示唆する所見を認めない場合 ESUS である。 治療:急性期治療、再発予防ともに Etiology undetermined に準じる。 ESUS に対する抗凝固療法の study が多数行われているが結果は出ていない。 現時点では aspirin を用いる。 ESUSに対する抗凝固薬の臨床試験は抗血栓療法トライアルデータベース(http://att.ebm-library.jp/content/ongoing_trials.html)で見ることができます。 NAVIGATE ESUS Rivaroxaban Versus Aspirin in Secondary Prevention of Stroke and Prevention of Systemic Embolism in Patients With Recent Embolic Stroke of Undetermined Source (ESUS) 【目的】塞栓源を特定できない塞栓性脳卒中患者7,000例の再発性脳卒中と全身性塞栓症の発症抑制再発予防について,rivaroxaban 15mg 1日1回投与をaspirin 100mg 1日1回投与と比較 【有効性の主要評価項目】再発性脳卒中(虚血性,出血性,病型不明の脳卒中,神経学的画像所見に異常を認めるTIA)+全身性塞栓症の複合 【安全性の主要評価項目】ISTH出血基準大出血 【デザイン】無作為割付,二重盲検試験 【終了予定】2017年11月 同試験の中間解析に