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脳静脈洞血栓症 CVST ガイドライン

【脳静脈洞血栓症(cerebral venous sinus thrombosis:CVT )】 [疫学] 若年者に好発 発症率: 5人/100,000/ 年 全脳卒中の 0.5 ~ 1.0% [病態] ・遺伝性または後天性の凝固亢進状態 (1)遺伝性因子 抗凝固蛋白欠乏症(アンチトロンビンⅢ,プロテインC,プロテイン S ), 第5凝固因子 Leiden 変異, プロトロンビンG20210A 変異 高ホモシステイン血症(エビデンスはない) (2)後天性因子 手術,外傷,妊娠, APS,悪性腫瘍,ホルモン療法,経口避妊薬(OC),感染症 ・リスクによる分類 (1)高リスク 抗凝固蛋白欠乏症(アンチトロンビンⅢ,プロテインC,プロテイン S ), 第5凝固因子 Leiden 変異(ホモ接合体) プロトロンビンG20210A 変異(ホモ接合体) (2)低リスク 第5凝固因子 Leiden 変異(ヘテロ接合体) プロトロンビンG20210A 変異(ヘテロ接合体) 高ホモシステイン血症 [臨床症状] 頭痛(90%) 乳頭浮腫・複視(外転神経麻痺) 片麻痺 失語 痙攣発作(40%) *脳深部静脈洞(直静脈洞)の血栓は視床障害により意識障害をきたす。 [検査] (1)CT 造影なしでは診断感度は低い。 単純CTでは血栓部位はHDAとなる * empty delta sign:上矢状静脈洞血栓症で認める。 *hyper dense sign 造影CTでは血栓が造影欠損として認められ硬膜の造影が増強される。 (2)MRI 静脈洞内の血栓が認められる。 (3)CT静脈造影(CTV) 迅速かつ確実にCVTを描出するが隣接した骨により見にくいことがある。 (4) MR静脈造影(MRV) 二次元タイム・オブ・フライト法か造影 MRVが用いられる。 髄液検査で髄圧亢進や血液検査上DDの高値なども参考所見として有効。 [治療] 抗凝固療法としてヘパリンが投与される。 出血があっても、ヘパリンは死亡率を上昇させず、投与が推奨される。 (Lancet 1991; 338: 597-600)(Stroke 2004; 35: 664- 670) APTTは約2倍でコントロールす

Limb shaking TIAとは

【 limb-shaking TIA 】 内頚動脈閉塞ないしは狭窄を主な原因とする繰り返す四肢の持続時間の短い不随意運動。てんかん発作との鑑別が重要となる。 症候性頚動脈閉塞の 11-28.6% に認める。 (Persoon S. Brain 2010;133:915-922) 分水嶺梗塞の 12% に生じる。 (Bogousslavsky J. Neurology 1986;36:373-377) 内頚動脈の低灌流が原因とされる。 (Baquis GD. Stroke 1985;16:444-448) 特定の体位で誘発されることから血行力学性の機序が推測される。 (Yanagihara T. Ann Neuro 1985;18:244-250) その他 MCA 狭窄、 MCA 解離、もやもや病、 ACA 狭窄などが原因とされる。 (Uno J. Brain and Nerve 2016;68(7):865-869) 病態としては線条体から淡蒼球外節への抑制性出力の脱落 →視床下核の過抑制と視床抑制の低下 →視床 - 大脳皮質間繊維の過活動 とされている。 (Shimizu T. Int Med 2001;40:808-812) SPECT では患側半球で血流低下を認める。 (Firlik AD. Neurosurgery 1996;39:607-611) 治療としては外科的血行再建が有効とされている。 頚動脈狭窄に対しては CEA, 閉塞に対しては EC-IC バイパスが有効である。 (Klempem NL. Neurosurgery 2002;51:483-487) 神経内科の勉強方 おすすめの教科書はこちら 研修医/内科医が読むべき本はこちら

APS(抗リン脂質抗体症候群)ガイドライン

【APS:抗リン脂質抗体症候群】 後天性血栓性素因の一。 基本的には線溶系の抑制による。 [原因] 原発性のもの:原発性抗リン脂質抗体症候群(PAPS) 膠原病に続発するもの:二次性抗リン脂質抗体症候群(SAPS) 基礎疾患の膠原病としてはSLEが最多(80%程度) その他SjS, RA, MCTDなどがある。 [疫学] 中年の女性に好発 平均年齢 PAPS:40.5±13.9歳(7-87歳) SAPS:41.9±13.6歳(11-97歳) 若年から高齢と全ての年齢で起こりうる。 [病態] 抗リン脂質抗体(aPL)の出現による。 aPLには抗カルジオリピン抗体(aCL), ループスアンチコアグラント(LA), 抗B2-GPI抗体がある。抗原となるリン脂質結合蛋白は、B2-GPI, PT, PC, PS, AN。 B2-GPI, PTを抗原とする抗リン脂質抗体→動脈性血栓が多い PC, PSを抗原とする抗リン脂質抗体→静脈性血栓が多い ANを抗原とする抗リン脂質抗体→習慣性流産が多い (Nojima J. Clin Chem 2001;47:1008-1015.) [症状] 動脈血栓症:脳梗塞>心筋梗塞 静脈血栓症:DVT 習慣性流産 [診断] 臨床所見 1.血栓 :画像検査や病理検査で確認できる1つ以上の動静脈血栓症 2.妊娠合併症:子宮内胎児死亡・早産・原因不明習慣性流産。 検査所見 1. LA陽性 2. ACL(IgGまたはIgM型) 3. 抗β2-glycoproteinⅠ抗体(IgGまたはIgM型) 臨床所見1項目以上+検査所見1項目以上12週間以上あけて2回検出で診断。 * 実際には臨床症状出現前に診断することが重要。 [治療] 抗凝固薬:ワーファリン 抗血小板薬:アスピリン、プレタール、プラビックス ワーファリンはINR 2-3でコントロールする。 (Crowther MA 2003. N Engl J Med ;349: 1133-1138) * 妊婦のAPS治療 (1)産科的異常や血栓症の既往がない:エビデンスは確立されていない。 (2)産科的異常の既往(早流産・子宮内胎児死亡)がある 35週まで低用量アスピリン→36週からヘ

【脳動脈解離ガイドライン】

【脳動脈解離ガイドライン】 日本において脳血管の解離は椎骨動脈に多い。 解離により、脳虚血・くも膜下出血をきたす。 脳動脈解離に脳虚血の発症機序としては塞栓機序または血行力学的機序がある。   脳梗塞 急性期治療として抗血栓療法を考慮する。 通例抗血小板療法を行う。 ( バイアスピリン 200mg/day 1week → 100mg/day) 通常の脳梗塞と同様にエダラボン・グリセオールを投与する。 抗凝固薬の有効性を示す明らかな RCT はない。 抗凝固薬と抗血小板薬を比較した RCT はない。 超急性期治療として血栓溶解療法を考慮しても良いが、動脈瘤がある場合や大動脈解離がある場合には禁忌である。 解離による閉塞血管は 8 日以内に 30% 、3ヶ月以内に 60-80% が再開通する。 3-6 か月を過ぎると再発のリスクは大きく低下する。 そのため発症から 3-6 か月は抗血栓療法を継続することが推奨されている。 可能であれば3か月毎に画像検査を行い、抗血栓薬の必要性を検討する。 6か月後以降は解離部に狭窄所見が残存していれば抗血栓を継続する。   くも膜下出血 くも膜下出血で発症した脳動脈解離における最大の予後不良因子は再出血。 再出血の頻度は 14-69% で発症後 24 時間以内に再発する。 入院時の重症グレード、再出血、 pearl-string sign が予後不良因子である。 外科的治療としては開頭手術と血管内手術がある。 開頭手術ではクリッピング 血管内手術では internal traping が有効 →脳幹への穿通枝梗塞の合併症に注意 非出血症例では比較的予後良好とされ、保存的治療が選択される。   神経内科の勉強方 おすすめの教科書はこちら 研修医/内科医が読むべき本はこちら

【Capsular warning syndrome: CWS】

【 Capsular warning syndrome: CWS 】 CWS は繰り返す内包領域の脳虚血発作。 Donnan らにより提唱された ( Donnan GA. Neurology 1993;43:957-962) 。 同一の血管の虚血を繰り返すため、同一の症状を繰り返す。 Crescendo TIA の一病型である。 *   Crescendo TIA :1週間で複数回の TIA を来したもの。 レンズ核線条体動脈の虚血であるため皮質症状は呈さない。 通常の crescendo TIA よりも頻回に発作を呈する傾向がある。 病態は未だに解明されていない。 BAD のような病態が考えられている。 予後は不良である。 抗血小板薬 + 抗凝固薬の治療でも 50% が脳梗塞へと進展したと報告されている。 (Staaf G.Cerebrovasc Dis 2004;17:1-8) クロピドグレル 300mg が有効であったという報告 (Fahey CD.Neurocrit Care 2005;2:183-184.) t-PA が有効であったという報告 (Vivanco-Hidalgo RM.Cerebrovasc Dis 2008;25:508-510.) 脳保護療法、抗血栓療法、血栓溶解療法、スタチン、低分子デキストランを有効とする報告 ( 田口芳治 . 臨床神経学 2010;50(5):320-324) 血行再建術が有効であったという報告 (Jun Lee.J Neurol Sci 2010;15(296):115–120.) などあるが、未だ確立した治療方法はない。 神経内科の勉強方 おすすめの教科書はこちら 研修医/内科医が読むべき本はこちら