APS(抗リン脂質抗体症候群)ガイドライン

【APS:抗リン脂質抗体症候群】
後天性血栓性素因の一。
基本的には線溶系の抑制による。

[原因]
原発性のもの:原発性抗リン脂質抗体症候群(PAPS)
膠原病に続発するもの:二次性抗リン脂質抗体症候群(SAPS)
基礎疾患の膠原病としてはSLEが最多(80%程度)
その他SjS, RA, MCTDなどがある。

[疫学]
中年の女性に好発

平均年齢
PAPS:40.5±13.9歳(7-87歳)
SAPS:41.9±13.6歳(11-97歳)
若年から高齢と全ての年齢で起こりうる。

[病態]
抗リン脂質抗体(aPL)の出現による。
aPLには抗カルジオリピン抗体(aCL), ループスアンチコアグラント(LA), 抗B2-GPI抗体がある。抗原となるリン脂質結合蛋白は、B2-GPI, PT, PC, PS, AN。

B2-GPI, PTを抗原とする抗リン脂質抗体→動脈性血栓が多い
PC, PSを抗原とする抗リン脂質抗体→静脈性血栓が多い
ANを抗原とする抗リン脂質抗体→習慣性流産が多い
(Nojima J. Clin Chem 2001;47:1008-1015.)

[症状]
動脈血栓症:脳梗塞>心筋梗塞
静脈血栓症:DVT
習慣性流産

[診断]

臨床所見
1.血栓 :画像検査や病理検査で確認できる1つ以上の動静脈血栓症
2.妊娠合併症:子宮内胎児死亡・早産・原因不明習慣性流産。
検査所見
1. LA陽性
2. ACL(IgGまたはIgM型)
3. 抗β2-glycoproteinⅠ抗体(IgGまたはIgM型)
臨床所見1項目以上+検査所見1項目以上12週間以上あけて2回検出で診断。
実際には臨床症状出現前に診断することが重要。

[治療]
抗凝固薬:ワーファリン
抗血小板薬:アスピリン、プレタール、プラビックス

ワーファリンはINR 2-3でコントロールする。
(Crowther MA 2003. N Engl J Med ;349: 1133-1138)

妊婦のAPS治療
(1)産科的異常や血栓症の既往がない:エビデンスは確立されていない。
(2)産科的異常の既往(早流産・子宮内胎児死亡)がある
35週まで低用量アスピリン→36週からヘパリン皮下中(10000U/day)
(3)血栓症の既往やハイリスク(血液検査上aPL高値)
5週までワーファリン
→6週から低用量アスピリン+ヘパリン皮下中
→36週からヘパリン皮下中(10000U/day)のみ

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