【排尿障害】

【排尿障害】
[排尿困難:dysuria]
尿閉→腎不全・逆行性尿路感染を来たす可能性があり早期の対処が必要。
*>100mlで尿路感染のリスク、>500mlで水腎症・腎後性腎不全のリスク。
1. 原因
(1)神経因性膀胱(膀胱の収縮力低下): stroke, Parkinson病, 脊髄障害, DM
(2)閉塞性尿路障害(尿路が器質的に閉塞・狭窄):前立腺肥大, 前立腺癌, 尿道損傷
*髄膜炎に伴う一過性の尿閉:Elsberg syndrome

2. 評価方法
(1)残尿量測定
膀胱エコー:残尿量=(長径x短径x前後径)/2
*横切りでの横軸=長径, 縦切りでの縦軸=短径, 横軸=前後径
残尿量>100mlであれば間欠的導尿を行う。

(2)国際前立腺スコア(IPSS)
 
0-7pts:軽症、8-19pts:中等症、20-35pts:重症

3.治療
(1)通過障害の治療
タムスロシン(ハルナール):α1-blocker
ナフトジピル(フリバス):α1-blocker
シロドシン(ユリーフ):α1-blocker
ウラジピル(エブランチル):α-blocker
(2)膀胱収縮力の向上
ベタネコール(ベサコリン):直接コリン作動薬
ジスチグミン(ウブレチド):コリンエステラーゼ阻害薬

[頻尿]
1.原因
(1)膀胱容量の減少:中枢性神経因性膀胱、妊娠、放射線治療後など
(2)残尿量の増加:前立腺肥大、尿道狭窄、末梢性神経因性膀胱、抗コリン薬
(3)排尿筋の不随意収縮:中枢性神経因性膀胱
(4)膀胱刺激:膀胱炎、膀胱癌、前立腺炎
(5)多尿
(6)心因性

2.評価
(1)悪性腫瘍の除外:尿細胞診
(2)排尿障害の有無:残尿測定
(3)過活動性膀胱症状質問票(OABSS)
 
<5pts:軽症、6-11pts:中等症、>12pts:重症

3.治療
(1)イミダフェナシン(ステーブラ):抗コリン薬
(2)コハク酸ソリフェナシン(ベシケア):抗コリン薬
(3)ミラベグロン(ベニタス):β3受容体刺激薬

抗コリン薬の禁忌
閉塞隅角緑内障、前立腺肥大、心不全、認知症、消化管運動低下
抗コリン薬の副作用
口渇・便秘

[神経因性膀胱治療薬の使い分け]
コリン作動薬:膀胱収縮力の向上
α-blocker:尿道抵抗性の低下

1.コリン作動薬
コリンエステラーゼ阻害薬:膀胱容量を維持し、残尿を減少。効果強い。
直接コリン作動薬:副作用として頻尿と耐性があるが、クリーゼの心配はない。

2. α-blocker
α受容体のサブセット
α1A:尿道括約筋
α1B:血管平滑筋
α1D:膀胱知覚過敏
*α1A選択性が高い方が尿流速は改善するが、夜間頻尿改善はα1Dが優れる。
*α1Aに対する選択性が最も高いのはユリーフ
*α1D拮抗作用が強いのはフリバス。
*エブランチルやカルデナリンはα1B作用が強く血圧低下に注意する。

[過活動性膀胱(OAB)のガイドライン]
1. OAB
尿意切迫感を主徴とした症候群。
通常頻尿を伴うが、切迫性尿失禁の合併は必須ではない。

2. 診断基準
1日の排尿回数が8回以上かつ尿意切迫感が週1回以上

3. 鑑別診断
膀胱癌・膀胱炎・前立腺炎・前立腺癌・排尿困難
→PSA測定、尿検査、尿細胞診、膀胱エコーを行う。

3. 評価
過活動性膀胱症状質問票(OABSS)

<5pts:軽症、6-11pts:中等症、>12pts:重症

4. 治療
(1)生活指導:カフェインや水分の過剰摂取の是正
(2)理学療法:骨盤底筋訓練、排泄介助
(3)薬物療法
①抗コリン薬
長時間作用型:バップフォー、ベシケア、トビエース
短時間作用型:ウリトス、ステーブラ、ポラキス、ネオキシ(ポラキス経皮剤)
ポラキスは脳への移行性が高く認知機能障害などの副作用現れやすい。
*抗コリン薬の副作用
口腔内乾燥・消化器症状(便秘など)、前立腺肥大の増悪、認知機能障害など
②β3刺激薬(ベニタス):膀胱弛緩作用。副作用少ない。
③三環形抗うつ薬(トフラニール)

5. 具体的処方
(1)女性および50歳未満の男性
①ベシケア(抗コリン薬)
5mg 1x朝食後。10mgまで増量可。腎機能低下・高齢者は2.5mgから開始。
②トビエース(抗コリン薬):4mg 1x。8mgまで増量可。
③ウリトス・ステーブラ(抗コリン薬):0.1-0.2mg x2/day。
④ベタニス(β3受容体刺激薬):50mg 1x/day
⑤トフラニール(三環系抗うつ薬):25mg 1-3回/day

(2)50歳以上の男性
①フリバス(α1-blocker):0.2mg 1x
②ハルナール(α1-blocker):50-75mg 1x
③ユリーフ(α1-blocker):4mg x2/day

[パーキンソン病と排尿障害]
1. 過活動性膀胱に対しては、ベシケア・デトルシトール・ウリトス・ステーブラ(抗コリン薬)を用いる。
2. 抗コリン薬が使用できない場合には、パロキセチン(パキシル)やミルナシプラン(トレドミン)を用いる。
3. 排尿困難に関してはα1-blockerのウラピジル(エブランチル)などを用いる。

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