脳梗塞治療の考え方


【脳梗塞の治療・考え方】
脳梗塞は血栓により脳血管が閉塞することで脳細胞が障害を受け、機能が損なわれる病気

分類
どこかから飛んできた血栓により閉塞する「塞栓症」
血管内に物質が溜まって最終的に閉塞する「血栓症」
がある

脳梗塞の治療は大きく2つに分けられる
1. 閉塞したところを再開通させる治療
2. これ以上閉塞しないようにする治療

1. 閉塞したところを再開通させる治療
所謂 超急性期治療
塞栓症でも血栓症でも関係ない
とにかく超強力な血液サラサラにする薬で詰まったところを溶かす治療
t-PA(アルテプラーゼ静注療法)と言われる
強力な薬なので副作用も強い
→出血合併症
脳梗塞で詰まってしまったところは徐々に組織がもろくなる
脳梗塞が起こってある程度時間が立ったところで使うと出血による死亡リスク
発症後4.5時間以内の使用が定められている
また、症状が軽い場合、脳出血の既往がある、脳梗塞と確定できない場合(てんかんや低血糖など)、出血のリスクが高い(コントロール不良の高血圧や高血糖、術後など)では使わない

また、太い血管(内頸動脈など)が閉塞している場合には外科的治療(血管内治療/血栓回収療法)が適応になる。
→発症後8時間までならokなのでt-PA後やt-PA適応外でもできる

2. これ以上閉塞しないようにする治療
脳梗塞は
どこかから飛んできた血栓により閉塞する「塞栓症」
血管内に物質が溜まって最終的に閉塞する「血栓症」
に分けられる。

救急の現場でどこから飛んできたか(塞栓源)を特定することは困難
過去または現在心房細動があれば「心原性脳塞栓症」
色んな血管が細い(=ゴミが溜まっている)と「アテローム血栓性脳梗塞」
脳のごく細い血管(穿通枝)の領域に小さい(1.5cm以下)梗塞なら「ラクナ梗塞」
症状が数時間から数日で階段状に悪くなっているならば「BAD
どれも当てはまらなければ「その他」
ということになる

「塞栓症」
主に心臓の不整脈(心房細動)や下肢(DVT)にできた血栓が飛んできて詰まる
比較的大きな血管で起こる
基本的には一度詰まったらそれきりなので症状進行少ない
→比較的大きな血管なので皮質を含み、症状が強いことが多い
→出血のリスクが高い
→発症当日は血液サラサラは使用しない
→翌日出血がないことを確認して血液サラサラを使う

塞栓症は血の流れが鬱滞したところに血栓ができる
→それを阻止するのは「抗凝固薬」

抗凝固薬
旧世代:ヘパリン・ワーファリン
新世代:DOAC ダビガトラン、アピキサバン、リバロキサバン、エドキサバン

弁膜症があればヘパリン、ワーファリン
なければDOAC

「血栓症」
基本的には進行性の病態
血管内に時間をかけてゴミが溜まって詰まる
→細い血管に生じやすい、ごく細いが血流少しはある
→急性期からしっかり血液サラサラを使った方が良い
ガイドライン上はバイアスピリン200mg
アスピリンによる潰瘍+脳梗塞による潰瘍(クッシング潰瘍)
PPIも併用する

細くなっている動脈をなんとか通すための血液サラサラ
→抗血小板薬
抗血小板薬:アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール

最近はアテローム血栓性なら3ヶ月、マイナーストロークなら3週間はDAPT
  DAPT:抗血小板薬2剤併用 アスピリン+クロピドグレルが一般的

  その他の治療
1. 脳保護療法
エダラボン:死にそうな細胞(ペナンブラ)を有害物質(フリーラジカル)から守る
腎機能が悪いと使えないので注意

2. 脳圧降下療法
脳梗塞が広範囲だったり後方循環で脳室周囲だったりすると脳のむくみ(浮腫)によって脳ヘルニアや水頭症をきたす。心臓に負担がかかるので注意

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