チック症 Tourette症候群
【チック症】
チック症の定義…
不随意的、急速に反復する非律動的で通常限局した筋群の運動あるいは発声
単純運動チック:瞬き、顔をしかめるなど
単純音声チック:咳払い、鼻をすするなど
複雑性チック:自分を叩く、ジャンプする、特定の言葉を繰り返すなど
本人にとって抑えがたい
抑えることはできる
睡眠時には消失する
→強迫スペクトラム障害に属する
(Obsessive Compulsive spectrum disorder:
OCSD)
・ Tourette症候群
チック症の重症型
慢性の運動性・音声性チックが併発し1年以上持続するもの
同語反復や反響動作、さらには社会的に受け入れがたい(わいせつな)単語を発する汚言がみられる。
併存症として強迫性障害や抑うつ、不安障害、注意欠陥多動性障害
頻度は出生10000人あたり5-10人
発症のpeakは5-8歳
症状のpeakは8-11歳とされる
*Tourette disorder(TD) vs Obsessive compulsive disorder(OCD)
OCDは強迫観念の反応として強迫行為が生じる
TDは自動的に強迫行為が生じる
TDの約30%にOCDを合併する
TD + OCDは男性に多く、発症年齢が高齢で、不安障害、ADHDの合併、衝動抑制障害、自傷行為を併発しやすい
(Gomes de Alvarenga P. CNS Spectr 2012: 17;
87-93)
(Kano,Y. Brain Dev 2010; 32:201-207)
*OCDの診断基準
【強迫症/強迫性障害の診断基準(DSM-5)】
A.
強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在
<強迫観念は以下の1.と2.によって定義される>
1.繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害の期間の一時期には、侵入的で不適切なものとして体験されており、
ほとんどの人にとって強い不安や苦痛の原因となる。
2.
その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、
あるいは何か他の思考や行為(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。
<強迫行為は以下の1.と2.によって定義される>
1.繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対応して、または厳密に適用しなくてはならないある決まりに従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている。
2.
その行動や心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、
または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的とし
ている。しかし、この行動や心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりを持たず、または明らかに過剰である。(注:幼い子供は、その行動や心の中の行為について十分な言語化による説明ができないことがある。)
B.強迫観念または強迫行為は、時間を浪費させる(1日1時間以上かける)、または臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、あるいはその他の重要なりょういきにおける機能の障害を引き起こしている。
C.強迫症状は、物質(例:乱用薬物・薬物)または他の身体疾患の生理学的作用によるものではない。
D.その症状は、他の精神障害では上手く説明されない。
[病態]
皮質-線条体-視床-皮質回路の異常
dopamine系の過活動が想定
* dopamine神経系
黒質-線条体路:中脳の黒質から線条体(被殻 + 尾状核)に投射
中脳-皮質路:中脳の腹側被蓋野から大脳皮質に投射
中脳-辺縁系路:中脳の腹側被蓋野から辺縁系に投射
隆起漏斗路:視床下部
→このうち報酬系がOCDに作用していると考えられる
報酬系は中脳-皮質路と中脳-辺縁系路
TDでは尾状核が対照群と比較して小さい
(Leckman J. J Child Adolesc Psychipharmacol
2010: 20; 237-247)
遺伝的要因の関与(特に多因子遺伝)が想定される
第一度近親者にTD患者がいると発症リスクは10-100倍
(Grados MA. J Am Acad Child Adolesc
Psychiatry 2010: 49; 810-819)
S:LITRK1の変異がTDに関与している可能性
(Abelson JF. Science 2005; 310:317-320)
[検査]
TD患者ではDATの取り込みが優位に上昇
(Liu H, Meng Z. Ann Nucl Med.
2010;24(7):515–521)
DAT-SPECTにおいてTDと対照群では差がなかった
(Yeh CB. Nucl Med Commun. 2006; 27:
779-784.)
→病初期では取り込み上昇と推察されている。
[薬物治療]
第一選択:α2-blocker クロニジン(カタプレス)
第二選択:抗精神病薬
ハロペリドール(セレネース)…定型抗精神病薬 ブチロフェノン系
リスペリドン(リスパダール)…非定型抗精神病薬 SDA
難治性のOCDに対してはDBSが考慮される
→アメリカFDAでは承認
欧州:Y-BOCS score 30以上で適応
側坐核にDBSを挿入
平均して約70%のsocre改善が得られた
(Denys D. Arch Gen Psychiatry 2010; 67 :
1061-1068)