壊死性ミオパチー SRP, HMGCR, ARS

【壊死性ミオパチー】
壊死性ミオパチー necrotizing myopathy
→筋の大小不同など筋原生変化に加えて、筋繊維の壊死・再生が顕著で炎症細胞浸潤をほとんど認めない筋病理所見に基づく疾患概念。
(Liang C. Curr Optin Rheunmatol 2011: 23; 612-619)

2004年にENMCの筋病理の診断基準において固有のカテゴリーとして確立された。
(Hoogendijk JE. Neuromuscul disord 2004;14 :337-345)

[原因]
壊死性ミオパチーの病理像をとる疾患は多岐にわたる
液性免疫を介在するものが多くを占める

免疫介在性には自己免疫疾患、悪性腫瘍、ウイルス、薬剤性が関与し、出現する自己抗体は抗SRP, HMGCR, ARS抗体が多い。

免疫介在性以外には内分泌異常や筋ジストロフィーが原因となる

[自己抗体]
原因となる自己抗体としては抗SRP抗体が最も多い。
ついで、抗HMGCR抗体、抗ARS抗体、抗Ku抗体、抗U1RNP抗体である。
Seronegativeも一定数存在する。
(Suzuki S. J neuroimmunol 2014; 274: 202-208)

  SRP抗体陽性ミオパチー
女性にやや多い
平均発症年齢は45-55
小児例も報告されている
MMT 3/5以下の重篤な筋力低下を呈する
頸部筋筋力低下や演劇脳障害などを呈する可能性が高い
間質性肺炎や悪性腫瘍などの筋外症状を呈する可能性は低い
ほぼ全例で血清CK1000を超える
臨床経過は3ヶ月以内の亜急性(一相性)型から慢性進行型・再発型まで様々
慢性型は発症年齢が若く、臨床症状はより重篤である
慢性型は四肢と肩甲帯の筋萎縮を認め上腕肩甲型筋ジストロフィーに近似
首下がりの鑑別として挙げる必要がある
治療は経口ステロイドが第一選択である
難治例にはIvIgを併用し、多くの場合は必要である
ステロイド減量の際にカルシニューリン阻害薬やMTXが併用される
リツキシマブの併用が有効であった報告もあげられる

  HMGCR抗体陽性ミオパチー
スタチン関連ミオパチーとして知られる。
スタチン関連ミオパチーには横紋筋融解症と壊死性ミオパチーがあげられる
HMGCR抗体陽性ミオパチーはスタチン中止後も筋力低下が進行する
HMGCR抗体陽性ミオパチーのうちスタチン誘発は30-50%程度
男性に多く平均発症年齢は60-70
スタチン誘発性の方が高齢
筋力低下は2ヶ月以内に進行し、血清CKは極めて高値
近位筋優位・左右対称性の筋力低下であり筋痛を伴う
重度の筋力低下、筋萎縮、嚥下困難は抗SRP抗体よりも少ない
ステロイドを中心とした免疫治療が行われ、治療反応性は比較的良好

  ARS抗体陽性ミオパチー
ARS抗体症候群の一症状として知られる
筋炎、間質性肺炎、レイノー現象、発熱、機工者の手などを共通症状とする
筋炎に関してのまとまったデータはない


[病理所見]
  SRP抗体陽性ミオパチー
壊死再生が目立ち、筋繊維の大小不同を認める
炎症細胞浸潤はマクロファージ優位で軽度
免疫組織学染色では筋繊維細胞質でのMHCクラスⅠの発現亢進を認める

  HMGCR抗体陽性ミオパチー
壊死再生が目立ち、筋繊維の大小不同を認める
炎症細胞浸潤はマクロファージ優位で軽度
免疫組織学染色では筋繊維細胞質でのMHCクラスⅠの発現亢進を認める
スタチン内服歴の有無で病理所見に差異はない

  ARS抗体陽性ミオパチー
ARS抗体としてJo-1, PL-7, アラニル, PL-12, OJ, EJ, KS, Zo, Haの8種類が知られている。筋繊維の壊死再生が主体となる



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