Angelman症候群
【Angelman症候群】
[定義]
Williamsらが提唱
精神発達遅滞・言語遅滞・失調症状・筋緊張低下・落ち着きのなさ・けいれん発作・誘引のない笑い・白い肌・下顎突出・舌の提出・平坦な後頭部などを特徴とする疾患。
[疫学]
12000-20000人に一人
[原因]
ゲノム刷り込み関連疾患
母性発現遺伝子UBE3Aの機能異常によって発症する。
15番染色体q11-q13(15q11-q13)領域の機能以上によって生じる。
(Horsthemke B. Am J Med Genet A 2008; 146A:
2041-2052)
* ゲノム刷り込み関連疾患
一般に哺乳類は常染色体により父親と母親から同じ遺伝子を二つ受け継ぐが、いくつかの遺伝子については片方の親から受け継いだ遺伝子のみが発現する。このような現象をゲノム刷り込みという。
→GABA作動性抑制に異常があると推察されている。
[病態]
精神発達遅滞・言語遅滞・失調症状・筋緊張低下・落ち着きのなさ・けいれん発作・誘引のない笑い・白い肌・下顎突出・舌の提出・平坦な後頭部などを特徴とする。
てんかん発作は非けいれん性てんかん発作重積状態を示す。
30-40%程度は完全に発作がなくなるとされる。
(Dan B. Epilepsia 2009; 50: 2331-2339)
脳波では発作間欠期においても両側広汎性棘徐波複合が遷延する。
欠失型ASではUBE3Aの他にGABA 受容体サブユニット3つ(GABRB
3,GABRA5,GABRG3)が欠失しており、これらの発現量は半減していると考えられている。誘発磁場の異常がCZPで改善したことから、抑制性GABA機能の障害が存在することが疑われた。
(Egawa K. Neuroimage 2008; 39: 593-9)
UBE3Aの欠損によりArc 蛋白の分解が阻害され、シナプス棘におけるArc 蛋白が過剰となる。その結果、AMPA型受容体の細胞内への過剰な取り込みが起こり、シナプス膜におけるAMPA型受容体が減少する。
* Arc蛋白
後シナプスに存在する蛋白で、AMPA型受容体に結合し細胞内に取り込むことでAMPA受容体の調節を行う。
[検査]
診断には遺伝子検査が用いられる。
てんかん発作に対しては脳波検査が有効である。
200-500μvに及ぶ高振幅2~3Hz律動性δ波が小児期~成人期に認められる。
高振幅徐波は、多くの症例において前頭部優位でびまん性に持続して出現する。
一部、棘波が重畳し三相波を呈する
[治療]
根本的な治療はない。
てんかん発作にはVPAを使用されることが多いが治療には難渋する。
学童期から思春期にかけて発作の減少を認める。
GABA受容体欠失の機序からはCZPやVPA
AMPA受容体減少の機序からはperampanel
の有効性が期待される。
エトスクシミドも有効とされるが強直・間代発作を増悪させるため注意。
睡眠障害にはメラトニン(Ramelteon)が有効とされる。
LMTがVPAやBZPなどが無効であった症例に対して有効であった
(Dion MH, Novotny EJ, Carmant L, Cossette
P, Nguyen DK: Lamotrigine therapy of epilepsy with Angelman syndrome. Epilepsia
2007, 48(3):593-596.)
ケトン食が有効であると報告
(Williams CA: Angelman Syndrome. In
Management of Genetic Syndromes 2nd edition. Edited by: Cassidy SB, Allanson
JE. Wiley-Liss Inch; 2005:53-62.)
ステロイドが一部の症例で有効であった
(Forrest KML, Young H, Dale RC, Gill DS:
Benefit of corticosteroid therapy in Angelman Syndrome. J Child Neurol 2009,
24(8):952-958.)
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