ガングリオシド抗体
【抗ガングリオシド抗体】
ガングリオシド:シアル酸をもつ神経系に豊富なスフィンゴ糖脂質。
→細胞接着・細胞内シグナル伝達・ミエリン-軸索間相互作用などに関与
[抗ガングリオシド抗体]
* 抗GM1抗体
ランビエ絞輪で軸索膜の障害(補体を介在しNaチャネル障害)
* 抗GD1a抗体、抗GQ1b抗体
運動神経軸索障害(補体介在性)
* 抗GQ1b抗体
Fisher症候群の90%以上で抗GQ1b抗体が上昇する。
(Chiba A, Ann Neurol.1992:31;677-679)
・外眼筋支配神経(ⅢⅣⅥ)のミエリン
・後根神経節
(Kusunoki S, Muscle Nerve.1999:221071-1074)
・骨格筋筋紡錘内繊維神経終末にGQ1bが存在
(Liu J,Invest Ophthalmol Vis
Sci.2009:50;3226-3232)
→外眼筋麻痺、失調、筋力低下を来たす。
* 抗GT1a抗体
PCB-GBS(pharyngeal-Cervical-Brachial-GBS)でしばしば認められる。
GT1bは舌咽神経・迷走神経に局在を持つ。
→球麻痺症状に関与する。
(Nagashima T, J Neurol Sci.
2004:219;139-145)
* 抗GD1b抗体
失調の強いGBSで多く認められる。
(Kusunoki S, Ann Neurol.1996:39;424-431)
ヒト末梢神経において傍絞輪部ミエリン、後根神経節細胞に局在
(Kusunoki S, Ann Neurol. 1999:45;400-403)
*抗Gal-C抗体
髄鞘に広く存在する。
(Dyer CA, J Cell Biol.1990:111;625-633)
Gal-C抗体陽性では感覚脱失とparesthesiaが多い。
(Ang CW, J Neuroimmunol.2002:130;179-183)
Gal-C抗体陽性GBSでは陰性GBSに比べ感覚障害が優位に多い。
運動神経電動速度では陽性GBSと陰性GBSで有意差なし。
感覚神経電動速度と振幅は陰性GBSに比べて陽性GBSで優位に低下。
→大径細胞障害が多いと推察される。
(Samukawa M, J Neurol Sci.2014:337;55-60)
[GBS]
GBSの急性期において約60%で血清抗ガングリオシド抗体が上昇
(Kenichi Kaida, Jpn J Clin Immunol.
2012:34(1);29-39)
日本ではAMAN 38%, AIDP 36%>AMSAN, Fisher synd, PCB-GBS
1. AIDP(acute inflammatory demyelinating
polyneuropathy)
脱髄が主体。古典的なGBS。
2. AMAN(acute motor axonal neuropathy)
Pure motor GBS, 軸索障害が主体。
GM1, GalNac-GD1a,GD1a, GM1b抗体が関与。
(Willson H J, Brain.2002:125;2591-2625)
GM1抗体が最も高頻度であるが末梢神経における局在は明らかでない。
3. AMSAN(acute motor sensory axonal
neuropathy)
感覚・運動・自律神経の障害。軸索障害が主体。
4.Fisher synd
5. PCB-GBS
6. 純粋感覚型GBS(pure sensory
GBS)
①脱髄型
②後根神経節型
-大径細胞型
-小径細胞型
③脊髄小脳型
[抗ガングリオシド抗体の神経障害機序]
1. 補体経路活性化介在
(Hafer-Macko C, Ann Neurol.
1996:40;635-644)
補体活性化経路
①古典的経路
②レクチン経路
③副次経路
GBSではmembrane attack
complex(MAC: 膜障害複合体)の形成を伴う古典的経路の活性化が重要であると言われている。
(Halstead S K, Brain.2004:127;2019-2123)
2. イオンチャネル機能障害
ランビエ絞輪部軸索膜上の電位依存性Naチャンネル機能障害
(Arasaki K, Muscle Nerve.1993:16;587-593)
AMANで認める可逆性の軸索障害の機序として考えられる。
(Kuwabara S, Ann Neurol.2002:52;180-187)
[抗ガングリオシド複合体抗体]
2種類のガングリオシドからなるガングリオシド複合体に対する抗体
→抗ガングリオシド複合体(ganglioside
complex=GSC)抗体
(Kaida k,Ann
Neurol.2004:56;567-571)
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