血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy: TMA)とDIC

血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy: TMA)
→消費性血小板減少、破砕赤血球を伴う溶血性貧血、臓器不全を呈する疾患群。(Wada H. Semin Thromb Hemost 2014;40:866-873)

原因:TTP, HUS, 非定型HUS, 二次性TMA
TTP(血栓性血小板減少性紫斑病): ADAMTS13の減少による。
STEC-HUS(溶血性尿毒素症候群):志賀毒素産生大腸菌(STEC)感染による。
Atypical HUS(非定型HUS: aHUS): 補体制御系の異常による。
二次性TMA

(1)TTP
血小板減少(Plt<12),貧血(Hb<10), 動揺する精神神経症状発熱腎機能障害を5徴候を主徴とする疾患。
(Wada H. Semin Thromb Hemost 2014;40:866-873)

ADAMTS13の欠損によりvWB因子が血中に残存し血小板の凝集を促進する。
その結果として全身性の微小血栓が形成されTTPを発症する。
TMA1/4を占める。
(Ito N. Int J Hematol 2009;90:328-335)

(2)HUS
血小板減少(Plt<12),貧血(Hb<10),腎機能障害を3徴候を主徴とする疾患。

大半は志賀毒素産生大腸菌感染によるSTEC-HUSTMA1/3を占める。
(Ito N. Int J Hematol 2009;90:328-335)

TTPHUSの鑑別にはSTECADMTS13の測定により行われる。

補体制御系の異常によるaHUSは遺伝子検査にて診断可能である。
(東大病院で測定可能 http://www.todai-jinnai.com/iryou/ahus

[DICTMAの鑑別]
TMAでは病初期より高度な貧血(MHA)を認める。
DICでも固形癌骨髄転移や劇症型溶連菌感染症ではMHAを合併する。
ADAMTS13<10%TTPと診断されるが敗血症性DICでも著しくADAMTS13の低下を認める例もある。
(Kobayashi T.Thromb Res 2008;121:849-854)
(Habe K. Thromb Res 2012;129:598-602)

補体活性化はaHUSで著しいがDICでも報告がある。
(Habe K. Thromb Res 2012;129:598-602)
(Ito-Habe N. Int J Hematol 2011;93:47-52)

FDP増加などの凝固亢進はDICで著しい。
(Wada H. Clin Chim Acta 2014;436C:130-134)

GPⅥの増加で示される血小板活性化はTMAで著しい。
(Yamashita Y. Thromb Res2014; l33:440-444)

(和田英夫. ICUCCU 2016;40(3):193-197)

[診断]
TMAが疑われた場合まず、最も頻度の高いSTEC-HUSを疑う
STECの検索及び大腸腫大の確認。
STEC-HUSが否定されたらADAMTS13の測定を行う。
ADAMTS13<10であればTTPでありPEIVMPを行う。
インヒビター価が高ければリツキシマブの投与を検討する。
ADAMTS13>10であれば二次性TMAを考える。
移植、妊娠、膠原病、悪性腫瘍、薬剤、敗血症/DICの検索を行う。
→二次性TMAが否定されればaHUSの可能性を考える。
蛋白・遺伝子の解析を行う。
aHUSに対してはエクリズマブが有効である。


(和田英夫. ICUCCU 2016;40(3):193-197)

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