インフルエンザ脳症 ガイドライン
【インフルエンザ脳症】
急性脳症
→非炎症性脳浮腫による中枢神経系の急性障害。
症状:意識障害、痙攣、頭蓋内圧亢進症状
(Mizuguchi M. Acta Neurol Scand
2007;115:45-56)
*脳症の病理学的分類
Reye症候群、急性壊死性脳症(ANE)、痙攣重積型脳症(AESD)、MERSなど
(Hoshino A. Brain Dev 2012;34:337-343)
(重症・難治性急性脳症の病因解明と診療確立に向けた研究班報告書2011)
・ サイトカインの生体に対する影響
positive)細胞性免疫・液性免疫などの生体防御機構
negative) trypsinとMMP-9の発現による血管内皮細胞・各種細胞の障害
インフルエンザ脳症…
インフルエンザ感染後に生産されたサイトカインにより脳血管内皮細胞の機能不全が生じ、びまん性の脳代謝不全が生じた状態。
インフルエンザ感染により39-40度の発熱が持続した後突然発症する脳浮腫で幻覚・意識障害などの中枢神経障害を伴う致死性の高い病態。
(Fujimoto S. Lancet 1998;352:873-875)
(インフルエンザ脳症ガイドライン. 小児科臨床 2009;62:2483-2528)
・来院時の診断基準
・入院後の診断基準
[診断を支持する所見]
[頭部画像所見]
[脳波所見]
[予後不良因子]
乳幼児:代謝における脂肪依存度が高い。
→加齢により糖代謝メインへと移行する。
[インフルエンザ脳症の機序]
乳幼児の脳血管内皮細胞は70%が脂肪代謝に依存する。
(Dagher Z. Circ.Res 2001;88:1276-1282)
→発熱時糖代謝が減少し、脂肪代謝に依存するようになる。
→脂肪酸代謝不全がインフルエンザ脳症のリスク因子となりうる。
Carnitine palmitoyltransferase-Ⅱ(CPT-Ⅱ)の熱不安定性遺伝子多型
:V605L, F352C, V368Iなど東アジア人に多い。
高熱下でCPT-Ⅱが熱失活し、後天性酵素欠損状態となり脳代謝不全をきたす。
* インフルエンザ以外にも高熱をきたした場合には同様の症状をきたす。
成人では脂質代謝依存→糖代謝依存へと変化するため脳症は生じない。
長期絶食があり糖代謝→脂質代謝へ傾けば生じうる。
不安定なCPT遺伝子多型
(Yao D. Hun Mut 2008;29:718-727)
重症インフルエンザ脳症患者で見られる熱不安定性CPT遺伝子多型の熱失活
(木戸博. 医学のあゆみ 2012;241(1):23-28)
高熱によるCPT2失活と細胞内APTレベル、β酸化の低下
(木戸博. 医学のあゆみ 2012;241(1):23-28)
[CPT-Ⅱ酵素欠損症に対する治療]
1. 飢餓状態を避ける
2. 高炭水化物食を頻回に摂取
3. 高熱を避ける
4. CPT-Ⅱ転写酵素活性化剤であるbezafibrate(ベザトールSR)の投与
インフルエンザ脳症患者の線維芽細胞に対するベザフィブレート投与による高熱下ミトコンドリア膜電位改善効果
(木戸博. 医学のあゆみ 2012;241(1):23-28)
5. 糖代謝酵素であるpyruvate
dehydrogenase(PDH)の活性低下を抑制する
PDH kinase4(PDK4)阻害剤であるdiisopropylamine(リバオール)の投与
6. MMP-9発現抑制に関連するclarithromycin(クラリス)の投与
[インフルエンザワクチンによる脳症]
*インフルエンザワクチンとADEM
インフルエンザワクチンはA.Bの二種混合ワクチンであった。
当時のインフルエンザワクチンによるADEMは1000万回に1例と報告
(Nakayama T. Vaccine 2007;25:570-576)
2009年にA/H1N1によるpandemicが生じA.B.A/H1N1の三種混合となった。
→その後の8ヶ月でインフルエンザワクチンによるADEMが13例報告
(前田憲吾. 臨床神経2015;55:269)
* インフルエンザワクチンとNHALE
インフルエンザワクチン摂取後にNHALEを来したという報告は数例のみ。
インフルエンザワクチン摂取後の抗GluR抗体陽性NHALEも報告されている。
(朝比奈美輝. 小児臨床 2013;66:941)
(北田茉里. 臨床神経 2011;51:683-687 )
(大森博之. Neuroinfection
2005;10:74-77)
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