[研修医必須項目] 2-1 脳血管障害

<脳血管障害>
【定義】
 脳血管障害とは脳の血管の器質的もしくは機能的異常により神経症状をもたらす病態の  
総称。
【分類】
*出血(くも膜下・脳内)  *梗塞(アテローム性・心原性・血行力学性)
【原因/鑑別診断】
【診察・検査】
*まず緊急処置が必要な疾患を除外⇒『急な』発症かどうかを必ず問診する。
                  その際血管病変の危険因子も必ず問診する。
 身体所見⇒意識レベル確認、対光反射や麻痺検索、髄膜刺激兆候など。
      Cushing兆候の有無もチェック。
      しかし脳内出血・クモ膜下出血疑いの症例には必要最小限にとどめ速やかに
      治療へ。再出血誘因の恐れあり。
      一通りの詳細な神経所見は一通りの処置が済み、バイタルが安定していれば
      必ずとる。今後の治療が奏功してるか判断材料にNIHSSが参考となる。
 採血・血ガス⇒痛み刺激は最小限に。t-PA適応にも必要のため凝固系も。
        t-PA適応時のため採血部位は、鼠径は避ける。
 画像   ⇒バイタル安定させたら検査可能。まずは頭部単純CT
       頭蓋内占拠病変・脳浮腫・脳ヘルニアの有無をチェック。
       CTで所見無い場合、脳梗塞・脳炎疑われる場合単純MRI
       拡散強調画像で急性脳梗塞・脳炎が検出可能。しかし発症1時間以内の超
       急性脳梗塞は検出不可能なことが多い。通常発症から3時間後から検出で
       きる。
       また、CTで検出出来ない微小な脳内出血はT2*で検出率上昇。
            
       ラクナ梗塞は、大きさが15mm以下の穿通枝領域である大脳深部白質や基
       底核、脳幹部に起こる小梗塞と定義されているため画像検査が必須である。
       より大きな梗塞はgiant lacuneもしくはstriatecapsular infarctionとい
       った名称を用い、主幹動脈のアテローム血栓性病変をもとに発症する。
            
       また、心原性脳梗塞は楔状の病変部を認め、範囲が大きい特徴がある。
*症状:
 感覚低下・知覚過敏・異常感覚の有無、疼痛の有無、運動障害の有無
 発症時の様子は本人が意識障害状態であれば目撃者に問診する。
*発症時間・経過:
 突発性は急性動脈閉塞症、脳血管障害、脊髄障害を疑う。

また、脳血管障害で誤診し易い症状をとる疾患は、
脳卒中様の発作を生じうる疾患には次のようなものがある。
*硬膜下血腫、硬膜外血腫 *脳腫瘍の中への出血 *脳膿瘍 *静脈洞血栓症
*脳炎、髄膜炎 *低血糖症 *非ケトン性高血糖性昏睡 *下垂体卒中
*てんかん発作とToddの麻痺 *片麻痺性片頭痛 *薬物中毒、毒物中毒
*心筋梗塞(いわゆる心脳卒中) *MELAS

【治療】
 クモ膜下出血・脳内出血:
  直ちに脳外科にコンサルト。
  同時に高血圧で脳圧亢進徴候(Cushing兆候・瞳孔不同・眼位正中偏位)無しの場合降圧療法開始。ジルチアゼム(ヘルベッサー)510mgを静注し、その後血圧上昇傾向ならば持続で投与する。目標血圧sBP140mmHg。ベッドup30°も有効。
  脳ヘルニア所見(瞳孔不同など)があれば直ちにマンニトール投与。
  輸液は脱水・血圧低下が無ければ急性期は最小限に。カルバゾクロムスルホン酸(アドナ)、トラネキサム酸(トランサミン)、ヘモコアグラーゼ(レプチラーゼ)を混注する。
  フォローCT3hr後に撮影し出血の拡大などの評価を行う。

 脳梗塞:
  t-PA適応が無いか迅速にチェック!
  最終健康確認時間から4.5時間以内が適応。
   即凝固含めた採血行いルート確保。画像検査に移る。
   t-PA除外基準:症候の急速な回復、最近のope歴・頭部外傷歴
消化管or尿路出血歴、頭蓋内出血の既往歴、梗塞発症後の痙攣
血小板≦10万、PT-INR1.748時間以内のヘパリン投与歴
高血圧(sBP185mmHg, dBP110mmHg)BS50 or BS400
34.5時間の場合:age80歳、NIHSS25点、
脳梗塞既往歴ありのDM、抗凝固中症例
  発症24時間以降に抗血小板薬開始。
  心房細動に対しては抗凝固薬開始。

 *対症療法:
  脳保護治療⇒ラジカット(腎障害に注意)
  脳浮腫治療;グリセオール、マンニトール


【経験した症例】

 左上下肢が動かないことを主訴に来院した歳女性。3日前より左上下肢を動かさないことに家族が気づき、様子を見ていたが症状改善しないため救急外来受診となった。来院時、意識清明、バイタルサインは安定しており、緊急性に乏しいと思われた。CT検査にて右側頭葉に低吸収域を認め、脳梗塞と診断されたが明らかな出血やヘルニアはなく、さらに発症から3日経過していると考えられたためt-PAの適応とはならなかった。ヘパリンを少量から開始し、誤嚥がないことを確認の上、食事を開始した。リハビリを行い、ヘパリンをバイアスピリンの内服に切り替えた後退院となった。


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