[研修医必須項目] 1-32 排尿障害

<排尿障害>
【定義】
 正常尿排出ができない状態。蓄尿障害や排尿の障害。
【分類】 
排尿困難、遷延性排尿、遷延性排尿、残尿、尿失禁
蓄尿障害、尿排出障害、または両方なのか。
*尿排出障害:
下部尿路閉塞、排尿筋機能低下、加齢、薬物、精神的要因
*蓄尿障害:
尿道括約筋の損傷、下部尿路閉塞、骨盤低筋の脆弱化、排尿筋異常、薬物、乳幼児
心理的要因

【原因/鑑別診断】
膀胱の過伸展、過活動。尿道の狭窄、異物。
【診察・検査】
 *下痢:         
   便(潜血、虫卵、虫体)血算、CRP、赤沈、電解質、腎機能
   好酸球、生化学検査、尿アミラーゼ、腫瘍マーカー、便CD抗原、嫌気性培養
   胸腹部XP、腹部超音波、腹部CT、注腸造影、大腸内視鏡、小腸造影
   消化吸収試験、事理神経機能、心理テスト、診断的治療
  *便秘:
    末梢血、弁潜血、腹部XP 器質性疾患疑いの場合、腫瘍マーカー、大腸XP
    大腸内視鏡 
  *全身性疾患の疑いの場合:甲状腺機能、電解質、血糖値

【治療】
尿検査:
蛋白陽性から腎疾患、尿糖陽性から糖尿病、沈渣の赤血球多数から尿路系の疾患、白血球数増加より尿路感染症を診断する手がかりを得る。NAG活性より尿細管障害を疑う。
*血球検査:
WBC増加より感染症、RBC減少により貧血などが疑われる。
*血液生化学検査:
CRPで感染症や炎症性疾患、ASTALTなどで肝機能検査、血清CrBUNで腎機能を把握。また電解質を確認
*胸部・腹部XP検査
*腹部・前立腺超音波検査

尿排出障害が疑われた場合、IPSSによる自覚症状の重症度評価、尿流量測定、残尿測定
を行う。IPSS8点以上、最大尿流15ml/s以下、有意な残尿10ml以上で直腸診、直腸超音波などで前立腺肥大、前立腺癌の診断を行う。
尿排出障害を訴える原因として最も多いのが、前立腺肥大症である。

 *前立腺肥大症
 前立腺の腺組織と間質の平滑筋が過形成を起こし、それによって尿路の狭窄を起こす良性腫瘍疾患である。症状としては排尿までの時間がかかる、尿勢が弱い、排尿時間が長いといったものが考えられる。
検査は、エコーで前立腺容量、排尿後の残尿量を計測し、uroflowmetryで尿流量動態を計測する。それによって診断、治療方針を決定する。PSA高値の場合には前立腺癌との鑑別のため前立腺生検も行われる。

【経験した症例
 前立腺癌の既往のある歳男性。前立腺癌が肺に転移しており、化学療法にて加療されていた。また前立腺癌よる排尿障害に対しては泌尿器科にて内服加療されていた。朝、ベッドから起き上がれなくなり救急車にて来院。意識清明、バイタルサインは安定していたが、下腹部の膨隆が著明であり、尿道バルーンを留置したところ、1時間で900mlの混濁した尿の排泄が認められた。これまでも自宅で排尿はしていたようだが、前立腺による圧迫により少しずつ貯留していたものと考えられた。まずは尿路感染症に対しLVFXの投与を開始し食事も摂れるまでに改善したが、尿道バルーンを抜去すると尿閉となるため尿道バルーン留置のまま退院となった。

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