[研修医必須項目] 1-19 胸痛

<胸痛>
定義・分類
 胸部の疼痛全般を指す。
【鑑別疾患】
*心疾患:ACS、心外膜炎
*脈管系:急性大動脈解離、胸部大動脈瘤、肺塞栓症、肺高血圧症
*呼吸器系:気胸、肺炎、胸膜炎、気管支炎、縦隔炎、膿胸
*消化器系:逆流性食道炎、胃十二指腸潰瘍、Mallory-Weiss症候群、胆石症、胆嚢炎、膵
      炎、食道痙攣、アカラシア、特発性食道破裂
*胸壁系:帯状疱疹、乳腺炎
*筋骨格系:肋間筋痙攣、肋骨骨折、肋軟骨炎、脊椎圧迫骨折、脊椎腫瘍
*心因性:過換気症候群、パニック障害
【検査】
*問診・診察
 バイタル安定していることを確認。
胸痛の性状・疼痛は限局性か・疼痛の移動性はあるか・持続時間・日内変動・増悪因子・随伴症状・放散痛の有無は。また、本人の生活歴・家族歴・既往歴も鑑別で重要となる。
*採血
 通常の血算・生化に加え、凝固系、T-ChoLDL-ChoTGCK-MBTroponin-Tを測定する。
 また、ACS疑いに関してはL-FABPTrop-Tの迅速キットがあるためこれらも行う。
12誘導心電図
 ACSを疑う際は可及的速やかに12誘導心電図を測定する。硝酸薬投与する場合はその前後の心電図を測定する。
心電図に所見認めなくとも、ACSを否定できない場合は34時間後に心電図検査を再検する。
*胸腹部Xp
 気胸・肺炎・大動脈解離・大動脈瘤の鑑別に行う。肋骨骨折・脊椎圧迫骨折も検索できる。
*胸腹部エコー
 心機能評価、胆嚢評価を行う。
*造影CT
 肺塞栓症・大動脈解離が疑わしい場合、胆嚢炎や膿瘍など感染が疑わしい場合行う。
【治療】
*心血管系
 ACSACS疑いは疑ったら即酸素投与し、高血圧の場合は初期はミオコールスプレーで降圧を図る。救急外来で外科手術の予定や抗凝固・血小板薬の内服歴や出血性疾患の既往歴を確認し、アスピリン200mgとクロピドグレル300mgを内服(バイアスピリンは噛んで内服)PPIとヘパリン(30005000単位)を経静脈的に投与し、緊急カテに移行する。
    待機的にカテを行う不安定狭心症は絶対安静で血管拡張薬(シグマートorミオコール)とヘパリン(100単位/kg/)を持続投与し、カテに備える。
*呼吸器系
  気胸:虚脱度Ⅱ度以上、進行性・両側性・緊張性気胸、胸水・血胸合併気胸
     陽圧換気する場合⇒胸腔ドレーン挿入、挿入後確認Xp、セファロスポリン1日投与
          経過観察する場合⇒連日胸部Xp撮影する。
*その他
  消化管潰瘍:絶食・補液、PPI・粘膜保護剤投与で経過観察。
        貧血が進行している、もしくは吐下血伴う潰瘍は上部内視鏡を行う。
  胆石・胆嚢炎:絶飲食で補液、胆汁移行性良好の抗菌薬を開始(セフトリアキソンなど)
         重症例では胆のう摘出術。
症例
  2型糖尿病・高血圧・脂質異常症で内科かかりつけの歳男性。

起床時に安静時胸痛を自覚しその後も倦怠感が改善しないため、当院救急外来を受診した。来院時、心電図にてV1V3にてST上昇、心臓超音波検査で前壁中隔壁の壁運動低下を認め、さらに心筋マーカー簡易検査キットにてTrop T陽性、H-FABP陽性となり急性心筋梗塞が疑われたため緊急入院となった。緊急冠動脈造影検査を施行したところ左前下行枝#6 99%#9 50%狭窄、左回旋枝#11-13 50-75%狭窄を認めた。左前下行枝の病変には血栓を認め、冠動脈閉塞のリスクが高いため、PCIを行い病変部にベアメタルステントを留置し、狭窄を解除した。術後、出血や穿孔などの大きな合併症は認められず、血圧や血糖コントロールを行い、退院となった。左回旋枝の残存病変については一旦退院後、再入院して加療を行うこととなった。



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