[研修医必須項目] 5-2 心不全

<心不全>
【定義】
 心臓のポンプ機能が低下し、身体の組織代謝に十分な血液を供給できない状態。
【分類 】
*急性/慢性腎不全  *左心/右心/心不全
【原因/鑑別診断】
 虚血性心疾患、心弁膜症、心筋疾患、高血圧性心疾患が原因となりうる。
 また、医原性にも過剰輸液で心不全が生じうる。 
【治療 】
*急性心不全:
 分類でForrester分類・Killip分類・Nohria分類・Nieminen分類・クリニカルシナリオがある。
 Forrester分類:心係数・肺動脈楔入圧で4タイプに分類。そのため血行動態を定量で
きた際にのみ使用可能。治療は念頭にあるが原因は含まれていない。
  Nohria分類:末梢循環が十分か、そして肺うっ血の有無で4つに分類した。診察・採
血・エコーで使用可能。4分類の治療と予後を示した。
 クリニカルシナリオ:血圧だけで急性心不全を分類し、その病態と治療法を提示した。
           この分類では高血圧の場合はとにかく血管拡張薬を使用し降圧す
ることが推奨されている。
・急性心不全の原因:AMIOMIによる虚血性心筋症・弁膜症・DCM・肥大型心筋症
          高血圧・甲状腺機能異常症・除/頻脈性不整脈・PTE
          循環血流量低下・貧血
・急性心不全の増悪因子:高血圧・心筋虚血・甲状腺機能異常・肺疾患・感染症・不整脈
            低栄養・貧血・電解質異常・妊娠・β遮断薬・SAS
 *初期治療:
まず210L/minの酸素投与を開始する。もし酸素化改善が認められなかったら速やかにNPPVを開始する(循環血漿量不足の場合のみ注意)NPPVでも改善認められなかったら挿管。
   血圧測定し高血圧ならミオコールスプレーを1回吸入orニトロペン1錠舌下投与。
  静脈確保し心電図をとる。採血と同時に血ガスも必ず採取。胸部Xp、心エコーをし、正確な尿量把握のため尿道バルーンを挿入する。
   不穏・疼痛の訴えがあれば鎮静・鎮痛を行う。
   使用薬剤は利尿薬(フロセミド・トルバブタン)、血管拡張薬(硝酸薬・シグマート)
  強心薬(カテコラミン・PDE阻害薬・ジギタリス)、hANP(血管内volume不足の際は禁忌)、モルヒネ(重篤な心不全に使用。作用機序は不明。)など。
   また、Forrester分類Ⅳで、重症な急性心不全症例ではIABPCHDFPCPSなどのデバイスも必要となる。

 *慢性心不全:
生活指導としてまず塩分制限(6‐2g/日以下)、運動量の規定、飲水過多に注意を促し、心不全を増悪する要因(感染症,水分の過剰摂取,不摂生,外科手術,ストレス負荷,治療薬の中止や飲み忘れ,過剰)を避けるよう促す。
 薬物療法の選択は病態に応じて行う。
心負荷を軽減する薬剤(利尿薬,ジギタリス薬,いわゆる血管拡張薬)、心収縮に直接かかわる薬剤(ジギタリス薬,β受容体作動薬,その他の強心薬)、心拍数に影響を及ぼす薬剤(ジギタリス薬,β受容体作動薬,一部のカルシウム拮抗薬)を使い分ける。
 循環動態を制御する神経液性因子の検討から新しい知見が得られている。心不全の病態では、腎由来のレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン(RAA)系の関与と塩分貯留、交感神経による陽性変力および変時作用、動静脈のトーンの亢進が知られる.心不全は心拍出量の低下を介し、RAA系の賦活化や交感神経活性の亢進を招く。
 このような機序を抑制するアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,β遮断薬,さらに新しくアンジオテンシンⅡ(AⅡ)受容体拮抗薬の投与は生命予後延長効果を示した。特にACE阻害薬の延長効果は、無症候のⅠ度例からⅣ度の重症例まで広く証明されている。
 また、近年トルバブタンというバソプレシン受容体拮抗薬が発売され、低Na血症を伴う心不全に有効とされている。
【経験した症例】
 歳男性。歳時に労作時胸部違和感のためカテーテル検査を行ったところ、3枝病変を認めたが、末梢のためカテーテル治療の適応はないと判断され薬物療法の方針となった。
夏の夜、胸部違和感、さらには倦怠感が強くなったため近医受診したところ、心電図にてAFリズム、採血にてBNP3100と循環不全を疑う所見があり当院に緊急入院となった。精査の結果、陳旧性心筋梗塞によるうっ血性心不全が疑われ、輸液管理、昇圧剤、利尿剤の投与を行った。循環動態改善が認められたのちカテーテル検査を行ったところ、前下行枝領域に対し有意狭窄のある右冠動脈で補っている状態であり、手術が必要と考えられ、冠動脈バイパス術施行された。

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