[研修医必須項目] 1-27 便通異常

<便通異常>
【定義】
 便通の回数・性状・量に異常をきたすこと。
【分類】 
*下痢
 浸透圧性下痢(非吸収性溶質、輸送障害、原発性二糖類分解酵素欠乏症)
 分泌性下痢(細菌エンテロトキシン、エンテロウィルス、ジヒドロキシ胆汁酸、脂肪酸、、)
 粘膜障害(慢性大腸炎、腸感染症)
 濾過の増加
 運動性の変化
*便秘
 腸内容の輸送障害(器質性・機能性狭窄・閉塞 運動・緊張の低下)
 排便反射障害(常習性便秘・一過性便秘)
 腹圧の減弱(腹筋力の低下)        
【原因/鑑別診断】
膵疾患:慢性膵炎
炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎,Crohn
感染性腸疾患:大腸憩室炎,腸結核
器質的腸疾患:大腸悪性腫瘍,虚血性大腸炎
機能性腸疾患:慢性閉塞,乳糖不耐症,消化不良症候群,蛋白漏出性胃腸症
内分泌疾患:糖尿病性下痢および便秘,甲状腺機能亢進症および低下症,
        副甲状腺機能亢進
ホルモン産生腫瘍:WDHA症候群,Zollinger-Ellison症候群
自己免疫疾患:強皮症
術後の機能障害:短腸症候群,盲係蹄症候群
その他:寄生虫,アミロイドーシス,Behcet
【診察・検査】
 *下痢:         
   便(潜血、虫卵、虫体)血算、CRP、赤沈、電解質、腎機能
   好酸球、生化学検査、尿アミラーゼ、腫瘍マーカー、便CD抗原、嫌気性培養
   胸腹部XP、腹部超音波、腹部CT、注腸造影、大腸内視鏡、小腸造影
   消化吸収試験、事理神経機能、心理テスト、診断的治療
  *便秘:
    末梢血、弁潜血、腹部XP 器質性疾患疑いの場合、腫瘍マーカー、大腸XP
    大腸内視鏡 
  *全身性疾患の疑いの場合:甲状腺機能、電解質、血糖値

【治療】
 若年~中年の間に比較的多い疾患である過敏性腸症候群は腹痛を主症状とし,慢性的あるいは反復性に便秘,下痢あるいは便秘・下痢交代の便通異常を示す機能的疾患で,腸管に器質的病変が認められず,腸管の運動異常はストレスにより増強されることが特徴である。腹痛のない下痢,便秘ならびに便秘・下痢交代は本症から除外することが定義づけられている。
確実な診断法がないので詳細な問診を行い、症状を性質・経過などから本症の特徴を
見つけ出す。そして除外診断を正確に行ったうえで診断を下すことになる。
*生活指導:規則正しい食生活,適当な運動
*食事療法:腸管粘膜を直接刺激する食物,調味料を用いない.
*心理療法:ライフスタイルの改善,支持的療法,自律訓練法,交流分析など.
*薬物療法:抗不安薬,抗うつ薬,抗コリン剤,消化管運動改善剤,自律神経調節剤
【経験した症例】
 脳梗塞のため入院加療していた歳男性。脳梗塞のため左下半身麻痺となり、リハビリを行っていたが、日中はベッドにいることが多いため便秘がちとなった。

消化管運動促進のためガスモチン15mg/日の内服を開始したが症状改善せず、硬便の訴えがあったため酸化マグネシウム2g/日を開始したところ、排便良好となった。

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