[研修医必須項目] 1-10 頭痛

<頭痛>
定義
 頭部に生じる疼痛。
分類
*原発性頭痛症候群(機能性頭痛):片頭痛・緊張性頭痛・群発頭痛
*症候性頭痛:特定の病因による二次的な頭痛。脳血管障害・脳腫瘍・高血圧など。
*その他:三叉神経痛・側頭動脈炎・反跳性頭痛(鎮痛薬の慢性的使用後に発生)
原因/鑑別診断
*頭蓋内病変:硬膜下出血・くも膜下出血・脳内出血(脳動脈奇形)・脳腫瘍・
       髄膜炎・脳炎・血管炎・水頭症・脳梗塞、特発性頭蓋内圧亢進症
*頭蓋外病変:三叉神経痛・側頭動脈炎・副鼻腔炎・緑内障・視神経炎・歯科疾患
*全身性  :発熱・低酸素血症・一酸化炭素中毒・高二酸化炭素血症・高血圧緊急症
       薬剤(反跳性頭痛・血管拡張薬)
*精神性  :双極性障害の抑うつ(自律神経の随伴症状に着目)
実施すべき検査
*まず緊急処置が必要な疾患を除外⇒『急な』頭痛かどうかを必ず問診!
 脳血管障害:身体所見⇒意識レベル確認、対光反射や麻痺検索、髄膜刺激兆候など。
            Cushing兆候の有無もチェック。
            しかし脳内出血・クモ膜下出血疑いの症例には必要最小限にとどめ速やかに治療へ。再出血誘因の恐れあり。
            一通りの詳細な神経所見は一通りの処置が済み、バイタルが安定していれば必ずとる。今後の治療が奏功しているか判断材料にNIHSS
       採血・血ガス⇒痛み刺激は最小限に。t-PA適応にも必要のため凝固系も。
              t-PA適応時のため採血部位は、鼠径は避ける。
       画像  ⇒バイタル安定させたら検査可能。まずは頭部単純CT
            頭蓋内占拠病変・脳浮腫・脳ヘルニアの有無をチェック。
            CTで所見無い場合、脳梗塞・脳炎疑われる場合単純MRI
            拡散強調画像で急性脳梗塞・脳炎が検出可能。しかし発症1時間以内の超急性脳梗塞は検出不可能なことが多い。通常発症から3時間後から検出できる。
            また、CTで検出出来ない微小な脳内出血はT2*で検出率up
 脳炎・髄膜炎:身体所見⇒一通りの脳神経・神経所見診察は必須。
             髄膜刺激兆候:Kernig徴候(感度5%,特異度95%)
Brudzinski徴候(感度5%, 特異度95%)
項部硬直(感度30%, 特異度68%)
Jolt accentuation(感度97%, 特異度60%)
             注)脳炎では通常髄膜刺激兆候は見られない。
        髄液検査⇒CTで脳圧亢進状態を除外したのちに行う。
             禁忌は脳圧亢進状態・刺入部感染・凝固障害。
             脳ヘルニア・低髄圧症候群予防のため出来るだけ細い針で。
             細胞数・糖はもちろん、ADAや各ウィルスPCRも考慮。
        頭部単純MRI⇒脳炎でDWIが有用と言われているが、DWI陰性の症例も報告されており、有用性について議論あり。
*緊急疾患以外
 問診、神経所見が大事となる。
治療
*クモ膜下出血・脳内出血:直ちに脳外科にコンサルト。同時に高血圧で脳圧亢進徴候(Cushing兆候・瞳孔不同・眼位正中偏位)無しの場合降圧療法開始。ジルチアゼム(ヘルベッサー)510mgを静注し、その後血圧上昇傾向ならば持続で投与する。目標血圧sBP140mmHg。ベッドup30°も有効。脳ヘルニア所見(瞳孔不同など)があれば直ちにマンニトール投与。輸液は脱水・血圧低下が無ければ急性期は最小限に。カルバゾクロムスルホン酸(アドナ)、トラネキサム酸(トランサミン)、ヘモコアグラーゼ(レプチラーゼ)を混注する。フォローCT3hr後に撮影し出血の拡大などの評価を行う。

*脳梗塞:t-PA適応が無いか迅速にチェックする。最終健康確認時間から4.5時間以内が適応。即凝固含めた採血行いルート確保し画像検査に移る。
 ・t-PA除外基準:症候の急速な回復、最近のope歴・頭部外傷歴
消化管or尿路出血歴、頭蓋内出血の既往歴、梗塞発症後の痙攣
血小板≦10万、PT-INR1.748時間以内のヘパリン投与歴
高血圧(sBP185mmHg, dBP110mmHg)BS50 or BS400
34.5時間の場合:age80歳、NIHSS25点、
脳梗塞既往歴ありのDM、抗凝固中症例
  発症24時間以降に抗血小板薬開始。
  心房細動に対しては抗凝固薬開始。

*髄膜炎:細菌性疑われるも検出出来ていない場合は第3世代セファロスポリン、バンコマイシンを併用する。ウィルス性疑いに対してはアシクロビルを開始し支持療法を行う。

*片頭痛:急性期⇒第一選択はトリプタン製剤。
NSAIDS、アセトアミノフェンも有効なことも。
前駆症状時にはエルゴタミンを投与する。
3回以上の発作症例ではベラパミルなどを予防薬で開始する。
経験した症例

 特に既往のない歳女性。繰り返す頭痛を訴えて来院した。神経診察では有意所見はなく、拍動性頭痛を右側頭部にのみ認め、さらに頭痛の発症する直前にきらきらと光るものが見えたということから、片頭痛との診断に至った。

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