[研修医必須項目] 1-22 咳・痰

<咳・痰>

【定義】
咳:気道内異物or分泌物を繊毛運動で除去しきれない時に発生する生理的反射運動。
痰:気管から分泌され、喀出されたもの。
【分類】
*湿性咳嗽:痰の排出を伴う
*乾性咳嗽:痰の喀出を伴わない
【原因/鑑別診断】
 日本の三大咳嗽は①咳喘息、②アトピー性咳嗽、③副鼻腔炎 (ウィルス感染症以外)
*乾性咳嗽:
  アトピー咳嗽、咳喘息、GERDACE阻害薬、喉頭アレルギー、間質性肺炎、心因性
  気管支結核、肺癌(特に中枢型)、肺気腫
*湿性咳嗽:
  副鼻腔炎、後鼻漏、慢性気管支炎、限局性気管支拡張症、気管支喘息、
  気管支食道瘻
【診察・検査】
 まず問診。かぜ症候群の決め手はまず問診から。いつから、どんな咳・痰が出現しているか、また日内変動や先駆症状、痰の性状なども問診する。
 次にバイタルの確認。頻呼吸、頻脈、血圧低下、SpO2低下などに注意し重症度を見誤らない。
 診察を行う。リンパ節・咽頭・呼吸音など確認する。この際嗄声・流涎・激しい咽頭痛を伴い急性喉頭蓋炎が疑われる場合は舌圧子での咽頭診察は注意!
 採血・痰培養・胸部Xp・必要時にはCTを用いて感染症や腫瘤、肺気腫などの有無をチェックする。また、感染症が疑わしい場合各種迅速検査も行う。
 間質性肺炎や膠原病が疑われる場合には補体・ESRや抗核抗体、KL-6なども検査項目に追加する。腫瘍が疑われた際には喀痰細胞診や気管支鏡・生検などを検討する。
【治療】
 咳嗽の治療適応は、呼吸困難や睡眠障害、体力の消耗、気胸などの合併が懸念されてい
るときに適応となる。基本的には去痰薬投与と原疾患治療となる。鎮嗽薬は感染症などに
は基本、排痰を促すためにもあまり投与しない。
気管支喘息など気管支攣縮に伴う咳嗽には気管支拡張薬が有効ある。
  異物誤嚥の場合,体位変換やハイムリック法、背部叩打法を試みる。それでも除去できない場合は喉頭鏡・マギール鉗子を用いての直視下や気管支鏡による異物の摘出を行う。
 急性喉頭蓋炎は非常に緊急性の高い疾患で、気道確保が最優先となる。ボスミン、ステロイド剤の投与を早急に行い、無効で特にsniffing positionを患者がとっている場合、気管内挿管・輪状甲状靭帯切開の適応となる。安易な舌圧子での診察や仰臥位への体位変換は注意が必要。
【経験した症例】

 特に既往のない歳女性。入院2週間前より感冒となったが経過観察にて改善した。しかしそのころから労作時の息切れや咳・痰を自覚するようになり、外来を受診したところ、胸部X線にてCTR63%の心拡大を認め、さらに心臓超音波検査にて多量の心嚢液貯留・右室の虚脱を認め緊急入院となった。心嚢ドレナージを行い、1日で2000mlの血性排液を認めた。ドレナージ後、胸部X線にて心陰影が縮小傾向となり、心臓超音波検査にて心嚢液が減少すると呼吸状態は安定し、咳や痰などの症状が消失した。心嚢液貯留の原因精査を行ったが、悪性腫瘍や結核・細菌感染症、大動脈乖離や動脈瘤破裂などの循環器疾患は認められず、入院前に感冒症状を認めたことからウイルス性心膜炎による心嚢液貯留だと考えられた。ドレナージ終了後、心嚢液再貯留は認められず退院となった。


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