[研修医必須項目] 13-5 統合失調症

<統合失調症>
【疾患定義】
統合失調症とは、思考や行動、感情を1つの目的に沿ってまとめていく能力、すなわち統合する能力が長期間にわたって低下し、その経過中にある種の幻覚、妄想、ひどくまとまりのない行動が見られる病態である。

【分類】
妄想型 (ICD-10 F20.0)
連合障害や自閉などの基礎症状が目立たず妄想・幻覚が症状の中心である。統合失調症はかつて早発性痴呆症と呼ばれていたように早発性(思春期から青年期)に発症することが多いが、当該亜型は30代以降の比較的遅い発症が特徴的であるとされる。また、薬物療法に比較的感応的とされる。

破瓜型(ICD-10 F20.1
破瓜とは16歳のことで、思春期・青年期に好発とされる。連合弛緩等の連合障害が主要な症状で、解体した思考や行動(disorganized thinking and behavior:混乱した思考や挙動)が目立つ。幻覚妄想はあっても体系的ではない。感情の表出、自発的行動が徐々に失われ人格荒廃に至るケースもあるとされる。

緊張型(ICD-10 F20.2
筋肉の硬直症状が特異的で興奮昏迷などの症状を呈する。陽性時には不自然な姿勢で静止したまま不動となったり、また逆に無目的の動作を繰り返したりする。近年では比較的その発症数は減少したと言われる場合がある。

鑑別不能型(ICD-10 F20.3
一般的な基準を満たしているものの、妄想型、破瓜型、緊張型どの亜型にも当てはまらないか、二つ以上の亜型の特徴を示す状態。

【原因】
遺伝性素因、ストレス、養育環境

【鑑別診断】
以下のように症状等で鑑別診断進めていく。統合失調症の症状は大きく二つに分かれる。一つは陽性症状、もう一つは陰性症状である。陽性症状は「これまでなかったものが出てくる」症状で、幻覚や妄想などである。幻覚は実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする症状。統合失調症では、聴覚における幻覚である幻聴(例:周りに人がいないのに自分のことを話している声が聴こえる)がよくみられる。妄想は事実とは異なったことを確信していることで、統合失調症においては被害的な内容の被害妄想(例:周囲から嫌がらせをされている、盗聴や監視をされている)がよくみられる。幻聴や被害妄想の内容は人によって様々である。また、混乱してしまうことにより思考や会話がまとまりにくくなる。このような症状は思考障害と言われている。このような症状に基づいて、感情の乱れや周囲からは理解されがたい行動がみられることもある。一方、陰性症状は「これまであったものが失われる」症状で、考える内容や会話が乏しくなる思考の貧困、喜怒哀楽などの感情の起伏が乏しくなる感情の鈍麻、気力が乏しくなる意欲の減退などがある。これらのような症状がある程度の期間以上続き、かつ日常生活に支障をきたしている場合、統合失調症と診断される。

【実施すべき検査】
心理検査 脳波検査
【治療方針】
幻覚や妄想などの症状が現れたときは、まずはできる限り速やかに受診させる。周囲から見ていつもと様子が違っても、幻覚や妄想は本人にとっては現実的な体験であるため、病気を否定し治療を拒むことがしばしばある(病識がないと言う)。しかし、このようなときも本人は何かしら困っていること(例:眠れない、不安がある、やる気がしない)があることが多く、これに焦点を当て受診を促すと有効な場合がある。治療は大きく薬物療法と精神科リハビリテーションの二つに分かれる。統合失調症の症状が起こるメカニズムとして、神経伝達物質(神経と神経の間で情報の伝達をする物質)の一つであるドパミンの過剰が関係しているとされている。薬物療法では、ドパミン受容体遮断作用を持つ抗精神病薬を使用する。この薬を服用することによりドパミン神経伝達の過剰が緩和され、幻覚や妄想などが改善される。残念ながらこの病気の原因はまだはっきりとわかっておらず、根本的な治療法はまだ見つかっていない。このため、再発予防に抗精神病薬を継続的に服用することが推奨されている。また、リハビリテーションを効果的に行うためにも薬物療法は基本となる。もう一つの精神科リハビリテーションは、生活技能訓練(SST)、作業療法、レクリエーション療法、デイケアなどがある。陰性症状に対する効果が期待できるとされている。

【経験した症例】
歳時に幻聴が出現し、統合失調症と診断された歳男性。これまでも被害妄想や幻聴・幻視による医療保護入院を繰り返していた。夜間牛乳を飲んだあとに誤嚥し、肺炎となったため入院。加療により全身状態が改善したのち、セロクエル50mgの内服が再開されたものの、「男の人がいる」「石が見える」などの幻視を認めるような発言は続いた。これ以上の内服薬の増量は難しく、さらに画像検査にて脳の萎縮もあり認知症も伴っていると考えられた。

誤嚥性肺炎の再発予防のため嚥下訓練が開始されたが、会話がオウム返しであり指示に従えず、胃ろうを造設し退院となった。


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