[研修医必修項目] 1-6 リンパ節腫脹

<リンパ節腫脹>
【定義】
リンパ節腫脹とは。抗原(異物)に対する免疫応答、細菌などの病原微生物の侵入、癌細胞の転移、リンパ節を構成する細胞(リンパ球、マクロファージ、樹状細胞)成分の腫瘍性増殖で認められる。

【分類・原因】
*感染症
・免疫反応による腫脹(ウイルス:EBV,HIV 細菌 真菌)
・病原体侵入による腫脹(化膿性感染:ブドウ球菌、肉芽腫形成:結核、梅毒、トキソプラズマ)
*感染症以外の疾患による反応性腫脹
・自己免疫性疾患(SLE RA 皮膚筋炎)
・その他(サルコイドーシス、薬物アレルギー、亜急性壊死性リンパ節炎)
*腫瘍性腫脹
・リンパ節原発の悪性腫瘍(悪性リンパ腫、マクログロブリン血症、組織球増殖症)
・その他悪性腫瘍の転移(癌腫、白血病、皮膚T細胞リンパ腫、多発骨髄腫)
*脂質代謝異常
Gaucher病 Niemann-Pick
*内分泌疾患
・甲状腺機能亢進症、Addison

【鑑別診断】
①問診
リンパ節腫脹に気付いた時期、きっかけ、部位、大きさ、疼痛(自発痛、圧痛)および熱感の有無、増大傾向の有無、外傷や化膿性炎症の有無、薬剤や動物との接触、全身症状、既往歴、随伴症状(リンパが灌流する臓器や部位に関連する症状の有無)
②身体所見
リンパ節腫脹が局在性か全身性か、皮膚の変化、大きさ、硬さ、圧痛、可動性
③検査
血液(末梢血所見)、感染症、培養、骨髄検査等(下記詳細)
以上①〜③から鑑別診断をすすめていく。以下、鑑別疾患に挙がる疾患。
【実施すべき検査】
①初診(悪性を疑うものを選択)
 直径10mmを超えるもの、または、直径10mm以下で硬いく触知するもの
 持続的に増大する腫脹は腫瘍性の可能性高い
②スクリーニング検査
血液検査(分画、生化学、赤沈等)、胸部レントゲン写真
③診断を進める為の二次検査
・血清学的検査
EBV抗体、HB抗原・抗体、HCV抗体、トキソプラズマ抗体、CMV抗体、HTLV-1抗体、HIV抗体、梅毒反応、抗核抗体、β2ミクログロブリン抗体
・その他
ツベルクリン反応、骨髄穿刺・生検、腹部超音波検査、CT検査、Gaシンチグラフィ、MRI、胃内視鏡検査、リンパ節生検

【治療方針】
①炎症性疾患によるもの:鎮痛薬、抗生剤投与で経過みる
②ウイルス性のもの:症状に合わせた治療(感冒薬等)で経過みる
③壊死性リンパ節炎:経過観察
④伝染性単核球症:マクロライド系、テトラサイクリン系投与(ペニシリン系で皮疹悪化)
⑤原疾患の治療に準ずる
 ・リンパ性白血病、悪性リンパ腫
 ・SLERAなどの自己免疫疾患
 ・サルコイドーシス、頸部リンパ節結核
上記のように、診察、検査等で原疾患を特定し、①~⑤に準じた治療を行っていく。

【経験した症例】

●歳女性。両鼠径部にリンパ節腫脹を自覚し来院。その他、発汗・体重減少などの症状を認めており、リンパ節生検を行ったところ、病理結果より悪性リンパ腫と診断された。放射線治療および化学療法治療開始目的で入院となり、初回化学療法を施行し、有害事象なく、全身状態良好で退院となった。                                                                                        



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