[研修医必修項目] 1-5 浮腫

<浮腫>
【定義】
組織間液が貯留し、全体的もしくは部分的に外表面状腫脹する状態。通常疼痛は伴わない。
【分類】
*分布による分類:全身性浮腫、局所性浮腫
*原因による分類:静脈圧亢進、血液の膠質浸透圧低下、間質液の膠質浸透圧上昇、
血管透過性亢進
【原因/鑑別診断】
*静脈圧亢進:
  うっ血などにより毛細血管内の静水圧が上昇し血管外に組織間液が漏出する。
  代表的疾患としては、心不全、上大静脈症候群、深部静脈血栓症などがある。
  その中でも上大静脈症候群・深部静脈血栓症は局所的浮腫を呈する。
*血液の膠質浸透圧低下、間質液の膠質浸透圧上昇:
  血液のタンパク質(主にアルブミン)が減少し、膠質浸透圧が低下し、間質液成分が血管外に漏出する。
血中アルブミンを喪失する代表的疾患はネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症など。血中アルブミンの産生不足の代表的疾患は肝硬変、低栄養が挙げられる。
間質液の膠質浸透圧上昇に伴う浮腫は、間質にアルブミンやムコ多糖類が間質に沈着することで浸透圧が上昇し、血管内から間質液成分が漏出する。代表的疾患として甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症があり、これら疾患の浮腫はnon-pitting edemaが特徴的である。
*血管透過性の亢進:
 炎症の原因であるサイトカインで、血管透過性が亢進し、血管外に間質液成分が漏出する。代表的疾患としてはアレルギー、局所的・全身性の感染、全身性の炎症を引き起こす疾患全てが含まれる。
【診察・検査】
全身性or局所性、浮腫の部位を観察、色調や症状をチェック
既往歴・ope歴・内服内容をチェック・日内変動の有無
血液検査(肝機能、腎機能、代謝系、栄養評価、心機能評価、感染の有無)、尿検査
心機能評価:聴診・頸静脈怒張の有無・心エコー・ECGIVCエコー
腹部エコー:肝臓評価、腎臓評価、腹水の有無など
下肢エコー:深部静脈血栓症の有無、静脈弁のチェック、場合によっては造影CT
胸腹部Xp:心血管系の評価、腫瘍の有無など
胸腹部CT:原疾患の検索(腫瘍や肝硬変・腎不全・感染源など)
【治療】
 原疾患の治療がメインとなる。
 静水圧亢進が亢進している場合、フロセミドなどの利尿薬で除水を試みる。
 膠質浸透圧関係の場合、低栄養の改善、アルブミンの補充を行いながら利尿薬で除水を行う。腎機能不全で利尿が得られない場合は人工透析の導入を検討する。
 毛細血管の血管透過性亢進は原疾患の治療を行う。
【症例】
 ●歳男性、糖尿病性腎症から慢性腎不全に至った一例。
15年来の2型糖尿病があり、インスリン導入されていたが度々自己中断していた。顕性腎症に至り、転居を機に当院腎臓内科を受診した。3ヶ月でCr4.3mg/dlから7.3mg/dlまで上昇し下肢浮腫を認めたため腎機能障害の改善、また透析療法導入を検討するため入院となった。糖尿病の既往があることや高度な血尿を認めないこと、さらにCT検査にて明らかな腎萎縮は認めないことから糖尿病性腎症から慢性腎不全に至ったと考えられ、入院後、食事療法や血糖コントロール、内服加療を行った。しかし腎機能はさらに上昇し、透析導入基準において60点と高値を認めたため、左前腕にシャントを造設し血液透析療法導入となった。

 透析導入後、除水による体液量減少に伴い、血圧は安定し浮腫は改善した。さらに透析により電解質や酸塩基平衡も安定した。透析導入後、明らかな合併症は認められずDry Weightを少しずつ減量し、全身状態良好となったため退院となった。



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