[研修医必須項目] 13-4 気分障害

<気分障害>
【定義】
 うつ病気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥(しょうそう)、精神活動の低下、食欲低下、不眠症などを特徴とする精神疾患である。
双極性障害:躁状態(躁病エピソード)およびうつ状態(大うつ病エピソード)という病相(エピソード)を繰り返す精神疾患である。

【分類】
 ※DSM-Ⅳ分類
 双極性障害:Ⅰ型双極性障害、Ⅱ型双極性障害、気分循環性障害、特定不能の双極性障害
 うつ病性障害:大うつ病性障害、気分変調性障害、特定不能うつ病性障害
         抑うつ関連障害(小うつ病性障害、反復性短期抑うつ障害、月経前不快気分障    
        害)
 一般身体疾患を示すことによる気分障害
 特定不能の気分障害

 ※ICD10分類
 F30躁病エピソード
30.0軽うつ病、F30.1精神病症状を伴わない躁病、F30.2精神病症状を伴う躁病
30.8その他の躁病エピソード、F30.9躁病エピソード、詳細不明

F31双極性感障害(躁うつ病)
31.0双極性感情障害・現在軽躁病エピソード
31.1双極性感情障害・現在精神病症状を伴わない躁病エピソード
31.2 双極性感情障害、現在精神病症状を伴う躁病エピソード
31.3 双極性感情障害、現在軽症又は中等症のうつ病エピソード
30 身体症状をともなわないもの31 身体症状をともなうもの)
31.4 双極性感情障害、現在精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード
31.5 双極性感情障害、現在精神病症状を伴う重症うつ病エピソード
31.6 双極性感情障害、現在混合性エピソード
31.7 双極性感情障害、現在寛解中のもの
31.8 その他の双極性感情障害
31.9 双極性感情障害、詳細不明


32 うつ病エピソード
32.0軽症うつ病エピソード
(00      身体症状をともなわないもの01 身体症状をともなうもの)
32.1 中等症うつ病エピソード
.10 身体症状をともなわないもの11 身体症状をともなうもの)
32.2 精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード
32.3 精神病症状を伴う重症うつ病エピソード
32.8 その他のうつ病エピソード
32.9 うつ病エピソード、詳細不明

33 反復性うつ病性障害
33.0反復性うつ病性障害、現在軽症エピソード
(00    身体症状をともなわないもの01 身体症状をともなうもの)
33.1反復性うつ病性障害、現在中等症エピソード
10 身体症状をともなわないもの 10 身体症状をともなわないもの)
33.2 反復性うつ病性障害、現在精神病症状を伴わない重症エピソード
33.3 反復性うつ病性障害、現在精神病症状を伴う重症エピソード
33.4 反復性うつ病性障害、現在寛解中のもの
33.8 その他の反復性うつ病性障害
33.9 反復性うつ病性障害、詳細不明

34 持続性気分「感情」障害
34.0 気分循環症
34.1 気分変調症
34.8 その他の持続性気分「感情」障害
34.9 持続性気分「感情」障害、詳細不明

38 その他の気分「感情」障害
38.0 その他の単発性気分「感情」障害00 混合性感情性エピソード
38.1 その他の反復性気分「感情」障害
38.8 その他の明示された気分「感情」障害

39 詳細不明の気分「感情」障害

【原因】
 気分障害の原因は完全には解明されていない。原因論としては発症の状況分析において誘因(心因)を重視する仮説と素因(体質・脆弱性)を重視する仮説がある。近年では後者を重視する流れにあり、病前性格、遺伝的素因、養育環境が生み出す脳の脆弱性が原因として注目されている。

【鑑別診断】
気分障害は以下の通り症状やエピソードから診断を進めていく。
うつ病
抑うつ気分や興味または喜びの消失に加えて、様々な症状を呈する。例えば、食欲の減退や増進、不眠や睡眠過多、精神運動の制止や強い焦燥、疲れやすさ、集中力の低下、自殺への思い、などである。例外はあるが、これらの症状が2週間以上続いたときにはうつ病とされる。この抑うつ状態の期間を、専門用語では大うつ病(だいうつびょう)エピソードと呼ぶ。頭痛、口渇、便秘・下痢、呼吸困難感、心悸亢進などの身体症状を伴うことも多く、うつ病患者さんの実に6割以上がまず内科を受診するとされる。また、慢性疾患にはうつ病が合併しやすいことが知られている。がんの約2038%、糖尿病の約25%、冠動脈疾患の約1619%にはうつ病が発症する。几帳面・完璧主義・真正直、がんばり屋で自分の中に閉じこもる方が、うつ病になりやすいと言われる。
症状が重くなると、妄想を持つことがある。その内容は自分が病気であるというもの(心気妄想)、お金がないというもの(貧困妄想)、何か罪を犯してしまったというもの(罪業妄想)、の3つが代表的である。

双極性障害
躁状態、または混合状態が1回認められれば、双極 I 型障害と診断される。うつ状態と躁状態が、症状のない寛解期をはさみながら繰り返していくことが多い。躁状態あるいはうつ状態から次のエピソードまでの間隔は平均して数年間である。また、うつ状態と躁状態の症状が混ざって出現する混合状態(混合性エピソード)が生じる場合もある。これに対して、うつ状態と軽躁状態のみが認められる場合を、双極 II 型障害と呼ぶ。軽躁状態は、患者や家族には病気とは認識されにくいため、自覚的には反復性のうつ病であると考えている場合も多い。若年発症では、最初のいくつかのエピソードはうつ状態である可能性が高い。双極性障害の診断は躁または軽躁エピードを必要とする。

【実施すべき検査】
 心理テスト
【治療方針】
 気分障害の治療原則は①休養、②薬物療法、③心理・社会的治療、④リハビリテーションの4つを適切に組み合わせ、患者の抱えた問題解決に向けて援助することである。
    休養
症状重い場合に自宅静養、入院が望ましい。自殺の可能性が高い場合、全身状態不良な場合などに入院が必要となる。また生活上、就労上の負担を軽減するように工夫を講じることも重要である。
    薬物療法
抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし3週間の継続的服用が必要である。抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系抗うつ薬あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用や眠気などの抗ヒスタミンといった副作用が比較的多い。これに対して近年開発されたセロトニン系に選択的に作用するSSRIや、セロトニンやノルアドレナリンに選択的に作用する薬SNRINaSSA等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる。不安・焦燥が強い場合などは鎮静薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することが多い。
    心理・社会的治療
認知行動療法
外界の認識の仕方で感情や気分をコントロールしようという治療法。抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。対人関係療法も認知行動療法の要素を持つ。
支持的精神療法
    リハビリテーション
復職リハビリ、疾患教育、家族療法
    電気痙攣療法
頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こすことで治療を行う。薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。

【経験した症例】

●歳女性。強皮症、間質性肺炎のため膠原病内科にて通院加療中であった。間質性肺炎の悪化のため長期入院をし、退院後、持病と第3子が重度の自閉症であることも心的ストレス要因となり徐々に食事量が低下、さらに首を吊ろうとしたところを家族に見つかり止められるということが三度あったため、医療保護入院となった。入院後、抗うつ薬の内服により精神状態は安定し、食事量の安


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