[研修医必修項目] 1-2 不眠

<不眠>
【定義】
 睡眠の開始と持続、一定した睡眠時間帯、あるいは眠りの質に繰り返し障害が認められ、眠る時間や機会が適切にもかかわらずこうした障害が繰り返され、その結果、日中に何らかの弊害がもたらされる状態。
*原因による分類
1.生理学的不眠
  環境や体調による不眠。
2.心理学的不眠
  心理的ストレスや不安などが関連した不眠。
3.薬理学的不眠
  嗜好品や薬剤に関連した不眠。
4.身体的疾患による不眠
  疾病に関連した不眠。
5.精神疾患による不眠
  精神疾患により生じた不眠。
*症状による分類
1.入眠障害
寝つきに30分~1時間以上かかる場合。
2.中途覚醒
朝起きる時間までに、何度も目が覚める。
3.早朝覚醒
朝早く目覚め、再度入眠することが出来ない。
4.熟眠障害
十分に睡眠時間はとっているが、眠りが浅く、熟眠感が得られない。
【原因/鑑別診断】
1. 身体的疾患関連
痛み、かゆみ、嘔気、発熱、呼吸困難、動悸など。
代表的身体疾患
心血管系疾患:心不全、冠動脈症候群、不整脈
呼吸器系疾患:喘息、睡眠時無呼吸症候群、COPD、肺炎など
消化器系疾患:胃十二指腸潰瘍、胃腸炎など
内分泌代謝疾患:甲状腺機能亢進症、クッシング症候群など
脳神経障害:アルツハイマー型認知症、脳血管障害、神経変性疾患、脳腫瘍など
皮膚疾患:アトピー性皮膚炎、カンジダ皮膚炎など掻痒感・疼痛を伴う疾患
睡眠関連運動障害:SAS、周期性四肢運動、など
2. 生理学的要因
環境の変化、寝室の騒音、温度、湿度など、睡眠環境としてふさわしくない生活環境。
3. 心理的要因
ストレス、精神的ショック、不安など。
4. 精神医学的要因
双極性障害、神経症、統合失調症など、すべての精神疾患で不眠が発現する。
5. 薬理学的要因
アルコール、降圧薬、降圧薬、タバコ、ステロイド、甲状腺薬など
検査
丁寧な問診での主観的評価、終夜睡眠ポリグラフ検査での客観的評価をし、ICDS-に基づき診断する。
【治療】
薬物療法
ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤
メラトニン受容体作動薬
その他(抗ヒスタミン剤、精神安定剤、抗うつ薬、向精神薬、漢方(抑肝散)など)
非薬物療法
*原因薬物の中止・減量
*認知行動療法
起きたら太陽の光を浴びる(体内時計を毎日正しくセットする)、光線療法
夕方以降は激しい運動をしない(神経を高ぶらせる)。日中の適度な運動は不眠症に効果的。
眠くなってから床に就く
就床時刻にこだわりすぎない
カフェイン(お茶・コーヒー・チョコレート・コーラ)などの刺激物の摂取制限
禁煙
寝酒の禁止(睡眠が浅くなる。耐性により量が増えてゆく)
【症例】

●歳男性。●歳のときに被害妄想が始まり、統合失調症と診断された。過去に二度の医療保護入院歴がある。職場を転々としていたが、無断欠勤を理由に解雇となり、自宅に閉じこもりがちになり不眠・抑うつ状態となり一日8合の過度な飲酒を行っていた。明らかな陽性症状は認めなかったものの、死ぬことについて考えるようになり任意入院となった。独居であり、入院時の内服残数が多かったため服薬コンプライアンスが低いと予想された。感情の平板化や思考の貧困などの陰性症状が強く、希死念慮も認めていたが、入院後これまでの内服を遵守すると精神状態は安定し不眠の症状もなくなった。

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