ADEM ガイドライン

ADEM
急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis=ADEM)

[概念]
刺激により惹起された中枢神経系の自己免疫疾患。
小児に多い
ウイルス感染や予防接種1-3週間後に発症する。
一部はMSに移行する。

[疫学]
15歳未満で0.4/10万人/
発症のピークは5
2:1で男に多い

[分類]
1. 特発性
2. 感染後→最も多い
3. ワクチン後

[病理]
リンパ球・マクロファージによる炎症・脱髄

[症状]
発熱・頭痛・嘔吐・髄膜刺激兆候、脳症、痙攣
数日で極期となり、数週間で改善する。
神経症状としては、歩行障害、麻痺、排尿障害、痙攣、視力障害など。
小児では発熱の持続や頭痛の頻度が高いが、知覚低下や多発神経根炎は少ない。

[検査所見]
1.血液検査
WBCCRPESRなど非特異的炎症の上昇。

2.髄液検査
非特異的な炎症パターン。
細胞・タンパクが上昇することが多いが、正常のこともある。
糖は正常範囲内である。
脱髄を反映してMBPが上昇する。

3.CT
概ね正常である。

4.MRI
T2, FLAIRで皮質下白質に境界不明瞭な左右非対称性の高信号域が散在する。
両側大脳半球、脳幹、小脳、脊髄に病変を認める。
しばしば皮質灰白質-皮質下白質境界や、基底核、視床にも病変を認める。

5.脳波
しばしば徐波の増加を認める。

6.SEP
視神経炎の補助診断に用いられる。

[診断]
主に臨床症状・MRI検査の結果で診断される。

ADEMの診断基準
1. 臨床的特徴
(1) 初回の中枢神経脱髄/炎症性疾患
(2)急性/亜急性の経過
(3)中枢神経の多発病変
(4)多症候性の神経症状
(5)脳症の所見:急性の行動変化or意識障害
(6)臨床症状or画像所見の経時的改善
(7)神経学的に後遺症が残る場合がある
(8)他の疾患の除外
2.画像所見(MRI T2 or FLAIR)
(1)中枢神経系の>1-2cmの多巣性、高信号域、両側性、非対称性病変
(2)灰白質にも所見を認める
(3)大脳+脊髄に病変を認める
(4)陳旧性病変を認めない
IPMSSG criteria. 2007

[鑑別診断]
MS, NMO, 横断性脊髄炎
感染性脳炎, Bechet, サルコイドーシス, CNSループス, 血管炎, 多発脳梗塞
ミトコンドリア病, 白質ジストロフィー, 先天性代謝性疾患

[治療]
(1)ステロイド療法
ステロイドパルス療法
後療法としてPSL 1mg/kg/hrで開始し移行漸減

(2)IVIg
ステロイドパルス療法で改善に乏しい場合の第2選択

通例、数日で回復し回復し比較的予後良好である。
(完全回復例は57-92%程度)
数週間-数ヶ月の経過を辿ることも稀ではない。
成人発症や脊髄病変を有する例では後遺症を残しやすい。

水痘・風疹後では他の先行感染と比して予後不良な傾向がある。



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