封入体筋炎 ガイドライン
【封入体筋炎】
中年以降に発症し、緩徐進行性の病理学的には縁取り空胞という比較的特異度の高い所見を呈する炎症性ミオパチーの一。
[疫学]
100万人あたり約10人
50代以降で発症。孤発性である。
[原因]
不明である。
近年VPC遺伝子異常が発見され病態解明が望まれる。
(Watts D. Nat Genet 2004:36;377-381)
・ 自己免疫疾患という説
自己免疫疾患の合併率が高い。
抗cN1A抗体という自己抗体が関与するという報告がある。
(Pluk H. Ann Neurol 2013:73;397-407)
・ 変性疾患という説
筋繊維内にAβやリン酸タウ、αシヌクレイン、TDP-43などの蓄積を認める。
[症状]
筋力低下
→特に大腿四頭筋、深指屈筋に強いとされる。
→階段昇降困難、Gower’s sign 陽性、ペットボトル開閉困難などの症状
* 筋力低下は時に非対称性である。
* 深部腱反射は正常〜やや低下である。
* 嚥下障害は1/4に認める。
* 悪性腫瘍との明らかな関係性は示されていない。
* 約20%でHTLV-1やHCVとの合併が示されている。
* 約15%で自己免疫疾患を合併する。特にSjSが高率である。(7-12%)
[所見]
(1)血液検査
CK上昇:大半が軽度上昇に止まる。2000以上は稀。
約20%で抗核抗体が陽性となる。
(2)MRI
萎縮筋にSTIR HIAを認める。
(3)神経伝導速度検査
約30%で感覚繊維の障害を認める。
(4)針筋電図検査
筋原性変化と神経原生変化を認める。
(5)筋生検
壊死繊維への単核球の浸潤
縁取り空胞
が特徴とされる。
[鑑別]
縁取り空胞を認めるという点で、
・ 肢体型筋ジストロフィー(1A, 2J)
・ 眼咽頭型筋ジストロフィー
・ Welander型ミオパチー
・ Becker型筋ジストロフィー
が鑑別にあがる。
*縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)は欧米ではhIBMと呼ばれる。
GNE遺伝子変異によるARの疾患でありIBMとは異なる病態である。
*その他臨床症状からはALSも鑑別にあがる。
[診断基準]
[治療]
現時点で有効な治療法はない。
ステロイドの効果は否定的である。
IVIgは嚥下機能障害に対して限定的な効果があるとされる。
IFN-βや免疫抑制剤は否定的である。
ビタミンEが有効であるという報告もあるが確立はされていない。
ヒト化抗CD52抗体が有効であるという報告があり臨床応用が期待される。
(Dalakas MC. Brain 2009:132;1536-44)
[経過]
緩徐進行性で生命予後は良好である。
約10年以内に車椅子のADLとなる。
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