FTD(前頭側頭型認知症)のガイドライン[bv-FTD, PNFA, SDとは]
[FTLD]
→前頭側頭葉に限局性萎縮を呈する例。
1.分類
(1) FTD: front-temporal dementia(前頭側頭型認知症)
人格障害・社会性の障害
(2) Semantic dementia(意味性認知症)
側頭葉前方の萎縮。意味記憶の障害。復唱可能だが言語の意味がわからない。
(3) PA: progressive aphasia(進行性失語)
表出性言語の障害
進行性失語症。ADの合併により認知機能低下を来たす。
2.FTLDの病理サブタイプ
(1)FTLD-tau(Pick)
ピック小体の存在で病理診断される。3リピートタウの蓄積。
平均年齢60歳。罹患期間は8−10年で通例家族歴はない。
臨床症状はFTDが64%, PAや発語失行が21%。SDは呈しにくい。
基底核・黒質・錐体路変性は軽度。
(2)FTLD-TDP
TDP-43陽性でタウ・シヌクレイン陰性。
病変は側頭葉優位が75%, 前頭葉・側頭葉同程度が25%。
臨床症状はSDが40%, FTDが30%。
80%に非対称性の運動症状(錐体路・錐体外路症状)が出現する。
(3)FTLD-FUS(BIBD, NIFD)
FUSの蓄積。多彩な症状を示す。一般染色ではBIBDとNIFDの鑑別はできない。Neurofilamentとα-internexinの染色で区別する。
*タウ蛋白
微小管付随蛋白の一種。各種疾患の封入体の構成成分。
ADでは6種のアイソフォームが全て異常蓄積する。
Pick diseaseでは3リピートタウが蓄積する。
CBD, PSP, AGD(嗜銀顆粒性認知症)では4リピートタウが蓄積する。
*タウオパチー
タウ蛋白が異常蓄積する疾患群。AD,FTLD, CBD, PSP, AGD。
*TDP-43
HIV遺伝子のTARに結合する因子。神経細胞封入体(NCIs), 神経細胞核内封入体(NIIs),ALSの前角細胞内封入体で陽性。
* 各病型での障害部位
3.疫学
dementiaにおいてはAD, DLBに次ぐ頻度である。AD:FTLDは約20:1。
病理サブタイプの中ではFTLD-TDPが30%, FTLD-tau・CBDがそれぞれ15%、PSPが7%程度であり、ごく少数のBIBDやNIFIDなどが加わる。
4.臨床症状
(1)行動障害型FTD(bv-FTD): 前頭葉障害がメイン。
脱抑制:衝動や感情を抑えることができなくなった状態。
無為・無関心:自発的な活動の減少。
他者への共感の欠如。
常同行動:特定の行為行動を繰り返す。
時刻表的生活:常同行動が日単位に及ぶもの。
滯続言語:同じ語句や同じ話を繰り返す。
食行動の変化:今までと異なる食事の嗜好。
病識の欠如:自らの病気に対する深刻さの欠如。
被影響性の亢進:他者の行動をまねる、書いてある文章を読み上げるなど。
認知機能障害:遂行機能障害を中心とし、記憶障害や視空間認知は保たれる。
(2)PNFA:優位半球シルビウス裂周囲の障害。
呼称・語想起の障害から始まり、音韻性錯語、復唱・書字・計算障害をきたす。
病初期には認知機能症は認めないが、顔面失行を伴うことが多い。
(3)Semantic Dementia:側頭葉の前方から底部にかけての障害。
語想起障害に加え、語理解障害を呈する。諺や生物への知識が障害され、ジェスチャー・人の顔も理解できなくなる。常同行動等の行動障害も出現する。
(4)FTD-MND
認知機能障害が先行し、半年から1年後に運動ニューロン障害が出現する。認知機能障害としてはbn-FTDに準ずる。運動ニューロン障害に関しては、球麻痺型が多く、強迫泣きや強迫笑いが見られる。下肢の筋力低下は軽度であることが多く、進行して呼吸不全に至った症例でも独歩可能なことがある。進行は比較的急速で診断から死亡までの平均期間は1.3年程度とされている。
5.病期分類
第Ⅰ期:発症から1-3年で人格障害や遂行機能障害が出現する。
第Ⅱ期:発症から3-6年で言語障害が出現。EEGで徐波化・画像所見も認める。
第Ⅲ期:発症から6-12年で疎通性はなく運動症状も認める。
6.検査
(1)神経心理検査:遂行機能障害や言語障害など病巣を反映した認知機能低下。
(2)模倣行為の有無
(3)画像検査:MRIなどの形態画像とSPECTなどの機能画像で評価する。
bvFTD,PNFA, SDでそれぞれの病変に一致した所見を呈する。
(4)血液検査:特異的な所見はない。
7.診断
*bv-FTDの診断基準
FTDにおける感度はpossibleで86%, probableで76%。
Rascovskyの診断基準 (2011)
8.治療
現時点で有効な薬物治療は存在しない。
AD治療薬、抗うつ薬、抗精神病薬などを対症療法的に使用する。
9.経過
FTLD全体では発症から死亡までの平均期間は7-11年。
初診から死亡までの生存期間の中央値は3-4年と報告されている。
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