褥瘡 ガイドライン 外用薬・ドレッシング剤の使い分け

【褥瘡】
[褥瘡とは]
身体に加わった外力は骨と皮膚表層の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。

[好発部位]
仙骨・踵骨

[機序]
(1)阻血性障害 (2)再灌流障害 (3)リンパ系機能障害 (4)細胞・組織の機械的変形
が複合的に関与して形成される。

[分類]
1.NPUAP/EPUAPによる分類
stage1:消退しない発赤→消退しない発赤を伴う損傷のない皮膚。
stage2:部分欠損→創底部が薄赤色の潰瘍として現れる真皮の部分欠損。
stage3:全層皮膚欠損→皮下脂肪は露出するが、骨・腱・筋肉の露出はない。
stage4:全層組織欠損→骨・腱・筋肉の露出を伴う全組織欠損。

2.DESIGN-Rによる評価スケール
DESIGN-R深さ以外の6項目(滲出液,大きさ,炎症/感染,肉芽組織,壊死組織,ポケット)の合計点の0点から66点までの総点がその創の重症度を表す。
Uは判定不能(unstageable)の頭文字。
1)Depth(深さ) 創内の一番深い部分で評価
d0:皮膚損傷・発赤なし
d1:持続する発赤
d2:真皮までの損傷
D3:皮下組織までの損傷
D4:皮下組織を越える損傷
D5:関節腔,体腔に至る損傷
DU        深さ判定が不能の場合
2)Exudate(滲出液)
e0:なし
e1:少量:毎日のドレッシング交換を要しない
e3:中等量:11回のドレッシング交換を要する
E6:多量:12回以上のドレッシング交換を要する
3)Size(大きさ):皮膚損傷範囲の長径と短径(cm)をかけた数値
s0:皮膚損傷なし
s34未満
s64以上 16未満
s816以上 36未満
s936以上 64未満
s1264以上 100未満
S15100以上
4)Inflammation/Infection(炎症/感染):創周辺の炎症・創自体の感染
i0:局所の炎症徴候なし
i1:局所の炎症徴候あり(創周囲の発赤,腫脹,熱感,疼痛)
I3:局所の明らかな感染徴候あり(炎症徴候,膿,悪臭など)
I9:全身的影響あり(発熱など)
5)Granulation tissue(肉芽組織):創面の肉芽組織の量
g0:治癒あるいは創が浅いため肉芽形成の評価ができない
g1:良性肉芽が創面の90%以上を占める
g3:良性肉芽が創面の50%以上90%未満を占める
G4:良性肉芽が,創面の10%以上50%未満を占める
G5:良性肉芽が,創面の10%未満を占める
G6:良性肉芽が全く形成されていない
6)Necrotic tissue(壊死組織)
n0:壊死組織なし
N3:柔らかい壊死組織あり
N6:硬く厚い密着した壊死組織あり
7)Pocket(ポケット):長径と短径を掛け合わせた数値
p0:ポケットなし
P64未満
P94以上16未満
P1216以上36未満
P2436以上

[外用薬]

 
化学的デブリドマンにブロメラインが用いられる。 
その他肉芽形成にフィブラストスプレーが用いられることもある。

[ドレッシング剤]
[外用薬・ドレッシング剤の使い分け]
1.急性期褥瘡
発症から1−3週間のもの。
創部保護を目的としてドレッシング剤を選択することが多い。
外用薬:亜鉛華軟膏・アズノール軟膏・ワセリン
ドレッシング剤:テガターム

2.浅い褥瘡
深さが真皮までにとどまる褥瘡。発赤・紫斑・水疱・びらん・浅い褥瘡などが含まれる。水疱は破らずに経過観察することが望ましいが、敗れた場合には、びらん・浅い潰瘍に準じて治療を行う。
 (1)発赤・紫斑・破れていない水疱
創面保護を目的としてドレッシング剤を選択することが多い。
外用薬:アズノール・ワセリン
ドレッシング剤:テガターム
(2)びらん・浅い潰瘍・破れた水疱
創部保護・程度な湿潤環境の維持を主体とし、ドレッシング剤が基本となる。
上皮化を促す必要がある場合には外用薬としてプロスタンディン軟膏を用いる。
仙骨部で便汚染が著しい場合にはゲーベンやユーパスタを用いる。
ドレッシング剤は保湿・疼痛緩和機能を有するデュオアクティブを基本とする。
乾燥している時にはイントラサイト、滲出液が多量の場合にはハイドロサイトを適宜使い分ける。
外用薬:亜鉛華・アズノール・プロスタンディン・ゲーベン・ユーパスタ
ドレッシング剤:デュオアクティブ・イントラサイト・ハイドロサイト

3. 滲出液が多い場合
滲出液が多い場合には吸水作用のある外用薬を基本とする。
カデックス・ユーパスタが基本薬剤となる。
ドレッシング剤は吸水作用に優れたハイドロサイトを基本とする。
外用薬:カデックス・ユーパスタ
ドレッシング剤:ハイドロサイト

4.滲出液が少ない場合
補水作用のある外用薬を基本薬剤とする。感染がない時にはオルセノンを、感染を合併している時にはゲーベンが基本となる。
ドレッシング剤は保湿、疼痛緩和機能を有するデュオアクティブが主体となる。
外用薬:オルセノン・ゲーベン
ドレッシング剤:デュオアクティブ

5.感染を伴う場合
感染抑制作用を有するカデックス・ユーパスタなどの外用薬が基本となる。
創部が乾燥している場合にはゲーベンも選択肢となる。
ドレッシング剤も抗感染作用を有するアクアセルを選択する。
外用薬:カデックス・ユーパスタ・ゲーベン
ドレッシング剤:アクアセルAg

6.肉芽形成を目的とする。
抗菌作用を有する外用薬は正常細胞も傷害するため、抗菌作用を有さない外用薬を選択する。乾燥している場合にはオルセノンを、滲出液が多量な場合にはアクトシンやブロメラインを用いる。プロスタンディンは適度な保湿作用を持ち使いやすいが、多きな創面には適さない。
ドレッシング剤はデュオアクティブを基本とするが、滲出液が多い場合にはハイドロサイトを用いる。
外用薬:プロスタンディン・オルセノン・アクトシン・ブロメライン
ドレッシング剤:デュオアクティブ・ハイドロサイト

7.壊死組織
壊死組織を認める場合には外用薬やドレッシング剤よりも外科的デブリドマンが有効となる。速やかに専門科へコンサルとする。

8.ポケット形成
ポケットの治療にあたってはまず壊死組織の除去が第一である。適宜外科的デブリドマンを行い、十分な洗浄を行い創面をきれいにする。
その上で、滲出液が多い場合にはユーパスタやカデックス、滲出液が少ない場合にはフィブラストやオルセノンなどの外用薬を用いる。
ドレッシング剤は基本的に使用しない。
外用薬:ユーパスタ・カデックス・フィブラスト・オルセノン

[その他]
*創部洗浄
→大量の生理食塩水or水道水で洗浄する。

*消毒は必要か
→洗浄すれば不要



神経内科の勉強方 おすすめの教科書はこちら

研修医/内科医が読むべき本はこちら

このブログの人気の投稿

脳梗塞の分類 TOAST(ATBI, A to A, aortagenic, CE, ESUS, paradoxical, lacunar, BAD)

筋電図の読み方 改定2017

除皮質硬直と除脳硬直