[B6] パーキンソン病 ガイドライン
【Parkinson’s disease】
中脳黒質-線条体系のドパミン神経細胞数の減少により生じる錐体外路症状を主体とする疾患群。
* ドパミン神経細胞が50%まで減少するとPDを発症する。
[評価]
1.
Hoehn and Yahr 分類
Ⅰ:症状は片側で軽微
Ⅱ:症状は両側にあるが軽微でADLは自立
Ⅲ:姿勢反射障害出現。ADL自立だが制約あり
Ⅳ:自力歩行不可能
Ⅴ:寝たきり
2.
UPDRS
(1)精神機能、行動、および気分に関する部分
(2)日常生活動作に関する部分
(3)運動能力検査に関する部分
*Part3は運動機能に関する項目で、治療効果の指標として用いられる。
[薬物治療]
PDにおける薬物治療は早期介入が推奨される。
* 薬物治療を行わないことで神経変性が予防されるというエビデンスはない。
高齢者(>70y)ではL-dopaから、非高齢者ではdopamine agonistから開始する。
* L-dopaは長期間の内服によりwearing offを生じやすくなるため。
1.
L-dopa単剤
→ドパストン
様々な原因で内服できない時に静注製剤として用いる。
2.
L-dopa/脱炭酸酵素阻害薬(DCI合剤)
DCIとの合剤により脳内に移行するドパミン量を増やした。
(1)L-dopa /
carbidopa製剤:レボドパ100mg + DCI 10mg
→メネシット・ネオドパストン・ドパコール
300mg 3xで開始し、750mg 3xを維持量とする。極量は1500mg/day。
*L-dopa/benserazideに対してpeak dose
dyskinesiaが少ない。
L-dopa / benserazide製剤:レボドパ100mg + DCI 25mg
→ECドパール・マドパー
300mg 3xで開始し、600mg 3xを維持量とする。
*l-dopa/carbidopaに対して消化器副作用少ない。
3.
MAO-B阻害薬(セレギリン)
→エフピーOD
ドパミンの代謝を阻害し、ドパミンの減少を抑制する。
エフピー(2.5) 1T1x 朝食後から開始。維持量は7.5mg/day。
5.0mg/day以上になる時は2x朝・昼食後にする。極量は10mg/day。
副作用:ジスキネジア、悪心、めまい、幻覚、OH、不眠
不眠の副作用あるため夜は服用しない。
4.
COMT阻害薬(エンタカポン)
→コムタン
末梢でのドパミン代謝を阻害し、脳へのドパミンをupする。
L-dopaと併用して1回100mgから開始。200mg/回まで増量可。
Wearing-offの改善目的に使用する。
副作用:ジスキネジア、便秘、幻覚、不眠、傾眠
MAO-B阻害薬との併用で非選択的MAO阻害を生じ、CA上昇による高血圧を来す可能性がある。併用時にはセレギリン 10mg/dayまでとする。
凝固系に作用するため定期的にPT-INR, APTT check必要。
着色尿を来す可能性がある。
* L-dopa/脱炭酸酵素阻害薬/COMT阻害薬の合剤
→スタレボ
配合錠L50:レボドパ50mg・カルビドパ5mg・エンタカポン100mg
配合錠L100:レボドパ100mg・カルビドパ10mg・エンタカポン100mg
5.
ドパミンアゴニスト
(1)麦角系
→心合併症(弁膜症など)のリスクがあり現在はほとんど使用されない。
・ブロモクリプチンメシル(パーロデル)
・ペルゴリドメシル(ペルマックス)
・カベルゴリン(カバサール):高PRL血症治療薬
(2)非麦角系
→若年発症のPDには1stで用いられる。
Agonist間での明確な選択基準を示したエビデンスはない。
副作用:眠気
・ プラミペキソール(D2):ビ・シフロール、ミラペックス
・ロピニロール(D2):レキップ
・ロチゴチン(D1+D2):ニュープロパッチ
・アポモルヒネ:アポカイン注
6.
抗コリン薬(トリヘキシフェニジル)
→アーテン
ドパミン低下による相対的なアセチルコリン過剰を抑制する。
振戦などの運動症状に有効。
副作用 中枢:幻覚、せん妄、記憶障害
末梢:口渇、便秘、排尿障害、緑内障
7.
ドパミン遊離促進薬(アマンタジン)
→シンメトリル
ドパミン作動神経系の亢進。
ジスキネジアに対して有効だが、効果の持続は8ヶ月以下。
副作用:幻覚・不眠
* プラミペキソールとの併用で副作用増強の可能性あり
8.
ノルアドレナリン前駆物質(ドロキシドパ)
→ドプスOD
YahrⅢ以上のPDですくみ足、OH(起立性低血圧)改善目的に用いる。
副作用:悪心、血圧上昇
禁忌:緑内障、末梢血管閉塞(HD)
9.
レボドパ賦活薬(ゾニサミド)
→トレリーフ
MAO-B阻害、ドパミン放出促進などにより線条体内ドパミン増量。
副作用:眠気・集中力低下
10.アデノシン受容体拮抗薬(イストラデフィリン)
→ノウリアスト
線条体・淡蒼球においてドパミン低下により相対的に過剰なアデノシンを抑制。
Wearing offの改善:ノウリアスト (20) 1日1回
On時の運動機能改善:ノウリアスト (40)
1日1回
副作用:眠気、幻覚、便秘
* wearing offに対して
→agonist, セレギリン, ゾニサミド, イストラデフィリンなどを追加。
* peak dose dyskinesiaに対して
(1) セレギリン・エンタカポンの減量/中止
(2) L-dopaの分割投与
(3) L-dopa減量しagonistを増量
(4) シンメトリル追加
(5) DBS
*diphasic dyskinesia
推奨される順序はない。
・ エンタカポンの中止
・ L-dopaを分割投与にする
・ L-dopa投与回数を減らし、責任投与を明確にする。
・ アマンタジン追加
・ DBS
* wearing off + peak dose dyskinesia
→イストラデフィリン・ゾニサミドの追加。
* off-time dystonia
→agonist(徐放剤)を用いる。
* L-dopa / agonistでcontrol困難な運動症状(tremorなど)
→ゾニサミド・トリヘキシフェニジル
* 日中の眠気
①
パーキンソン病の非運動症状
②
agonist/L-dopaの副作用
③
夜間頻尿による不眠
→agonist減量・中止し、覚醒効果のあるセレギリン追加。
* RBD
→クロナゼパムが1st。日中眠気ある場合はロゼレム・抑肝散など
* Camptocormia, drop head, Pisa’s sign
→agonistの中止
* Frozen gait
Off phase: wearing offとしてagonist追加。D1+2作用のロチゴチン推奨。
On phase: ドロキシドパ追加
* Depression
→プラミペキソール追加。
効果がなければ三環系抗うつ薬、SSRI追加。
* Hallucination
→追加した薬剤の中止。
効果がなければDM(-)ならクエチアピン、DM(+)ならリスペリドン追加。
* OH
起立3分以内のSBP20mmHg以上, DBP10mmHg以上低下。
心臓における交感神経の脱神経によるとされている。
非薬物療法:塩分摂取(>8g)・男性ストッキング・臥床中の頭部高位
薬物療法:ミドドリン(メトリジン)、フルドロコルチゾン(フロリネン)、ドロキシドパ(ドプス)
ミドドリンの方が半減期が短く、第一選択である。
夜間など低血圧を伴う場合には服薬時間を調整する。
ドロキシドパは自覚症状を改善するが、OH自体に対するエビデンスはない。
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