[B6] 遺伝性痙性対麻痺

【遺伝性痙性対麻痺:hereditary spastic paraplegia(HSP)
緩徐進行性の下肢痙縮と筋力低下を主徴とし、脊髄錘体路・後索・脊髄小脳路の系統的変性を主病変とする神経変性症候群。

[病型]
純粋型:痙性対麻痺のみ。ときに膀胱直腸障害・振動覚低下・上肢腱反射亢進を伴う。
複合型:痙性対麻痺に加え、末梢神経障害・失調・脳梁菲薄化・精神発達遅滞等を伴う。

[遺伝形式]
常染色体優性:AD-HSP
常染色体劣性:AR-HSP
X連鎖型:XL-HSP

[鑑別診断]
脱髄疾患:MS/NMO, ADEM
変性疾患:ALS, 原発性側索硬化症, SCD, AD, CMT
感染症:HTLV-1関連脊髄症, HIV脊髄症, 梅毒, プリオン病
その他:サルコイドーシス, 脊髄空洞症, 脊髄腫瘍, 脊髄梗塞, 外傷性脊髄症, Higashi synd

[遺伝型]
JASPAC事務局へ問い合わせ。
1. 常染色体優性:AD-HSP
(1)SPG3A
AD-HSP10%。若年発症に限ると30%を占める。
平均発症年齢:4.6
典型例では純粋型を呈するが、振動覚低下・下肢筋委縮・排尿障害・側彎などを認める。

(2)SPG4
AD-HSP40%と最も高頻度。
発症年齢は0-74歳と幅広い。
ほとんどが純粋型であるが、まれに認知機能障害を呈する。

(3)SPG6
全世界で10家系に満たず、本邦では1家系。
平均発症年齢は22歳でほとんどが純粋型。

2. 常染色体劣性:AR-HSP
(1)SPG11
平均発症年齢は14才で比較的頻度の高いHSP
痙性歩行または精神発達遅滞で発症し、16±6歳程度でADL車椅子となる。
MRI上脳梁の菲薄化、白質病変、脳皮質の委縮などを認める。

(2)ARSACS
本邦では10家系移乗。
発症年齢は3-9歳と若年。
下肢痙縮は徐々に増悪し、四肢腱反射は経過中亢進を来す。
MRIでは小脳虫部上葉の委縮が特徴で、まれにmegacisterna magnaや頚髄萎縮を認める。
T2/FLAIRで橋の線状低信号が特徴であるとの報告もある。
末梢神経電動速度検査では感覚優位の軸索性ニューロパチーが特徴。


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