[B6] プリオン病
【プリオン病】
Creutzfeldt-Jakob disease(CJD)などの異常プリオン蛋白が蓄積する疾患群。
[疫学]
1/100万人/年
[分類]
1.
孤発型CJD:典型(MM1, MV1)と非典型(MM2皮質/視床,MV2,VV1-2)
2.
遺伝性CJD: 家族性CJD, 致死性家族性不眠症 (FFI), GSS
3.
獲得性CJD: kuru病, 硬膜移植後CJD、変異型CJD, BSE
[行政]
・特定疾患治療研究事業対象疾患
→難病情報センターHP参照
・患者家族支援
→ヤコブ病サポートネットワークHP
・CJDサーベイランス委員会
→各種検査・専門医による診察
・第5類感染症
→診断後1週間以内の保健所への届け出が必要
[各論]
1.
孤発型CJD
(1)症状
第1期:倦怠感、めまい、ふらつき、視覚異常、抑うつ気分
第2期:認知機能低下、錐体路/錐体外路症状、ミオクローヌス
第3期:無動、無言、除皮質硬直、屈曲肢位をとる。
(2)subtype
* 非典型のMM2は緩徐進行で経過は約1-2年
* MM2視床型は不眠・自律神経障害・認知機能障害・精神症状を来す。
* MV2型は稀で本邦では約1%。Kuru斑を認める。
* VV1/2は非常に稀で本邦では0%
(3)診断基準(WHO基準)
A. definite: 病理所見による
B. Probable:以下のa.bに加えcまたはdを満たす。
a)急速進行性認知機能障害
b)以下4項目のうち2項目以上
・ミオクローヌス
・ 視覚or小脳症状
・ 錐体路or錐体外路症状
・ 無動
c)脳波検査でPSD
d)髄液検査で14-3-3蛋白陽性で経過が2年未満
C. Possible: 上記a,bを満たすが脳波所見を認めない。
(4)鑑別
・ 脳脊髄液14-3-3蛋白陽性
→AD(6%), vascular dementia(10%), DLB(5%), FTLD(4%), MSA(3%),
CBD(3%),iNPH(6%), PD(4%), PSP(3%), 脳炎・髄膜炎(20%),
傍腫瘍症候群(20%), stroke(15%), seizure(17%), 代謝性脳症(3%)
・ MRI
ヘルペス脳炎:皮質だけでなく白質もDWI high
自己免疫性辺縁系脳炎:ADCでも上昇。T2 shine through
epilepsy:DWI HIAの領域(側頭葉内側)や脳腫脹、SPECT変化など
心原性脳塞栓症:臨床症状から鑑別
・ 臨床症状
AD, vascular dementia, PD, P-syndrome, SCD,
MN disease with dementia
脳炎, 脳腫瘍, 梅毒, 代謝性脳症
(5)検査
①
髄液検査
長崎大学に郵送。国への届け出もやってくれる。
②
脳波検査
PSDを認める。
発症早期では45%, 全経過中には90%程度が陽性。
③
画像検査
典型例ではDWI, FLAIRで大脳皮質ないし大脳皮質+線条体にHIAを認める。
線条体のみは非典型的。DWIの方がFLAIRより感度が高い。
ADCはLIAとなることが多いが、進行によりHighとなる。
大脳皮質の病変はcortical ribboning sign(非対称で辺縁系は保たれる)
非典型例では
·
MM2 皮質型:大脳皮質にDWI high
·
MM2 視床型:SPECTで視床の血流低下
(6)治療
現在のところ対症療法のみで進行を抑制する薬剤はない。
①
キナクリン:肝障害あり推奨されない。(Grade C2)
②
フルピルチン:効果不詳(Grade C2)
③
ドキシサイクリン:効果不詳(Grade C2)
④
ペントサン硫酸:効果不詳(Grade C2)
対症療法としては
経口摂取不可例に対しては経鼻胃管による栄養(Grade C1)
ミオクローヌスに対してはクロナゼパム(リボトリール)やバルプロ酸(デパケン)が使用されるが明確なエビデンスはない(Grade C1)
2.
遺伝性プリオン病
(1)
家族性CJD
(2)
致死性家族性不眠症 (FFI)
(3)
Gerstmann-Straussler-Scheinker
disease (GSS)
本邦での遺伝性プリオン病では家族歴がない場合が多いので遺伝子検査が必須
→東北大学に依頼する。
3.
獲得性プリオン病
→ kuru病, 硬膜移植後CJD、変異型CJD, BSE
(1)医原性CJD
本邦で報告されている医原性CJDは全て硬膜移植後CJDである。
診断基準は孤発性CJDに従う。
硬膜移植の既往があればdCJDと診断する。
同時に遺伝子検査を行い、遺伝性プリオン病を除外する。
(2)変異型CJD
精神症状で発症し、痛みや異常感覚などの感覚異常を発症初期に呈することが多い。
MRIではT2, FLAIRで左右対称性の視床高信号(pulvinar sign)を認める。
確定診断は脳における異常なPrPの沈着(病理・ウエスタンブロット)の証明である。
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