[B6] Guillan Barre Syndrome / Fisher syndrome

Guillan Barre Syndrome / Fisher Syndrome
[分類]
1.    GBS
(1)  脱髄が主体のもの:AIDP
(2)  軸索障害が主体のもの     AMAN:運動神経の軸索障害
AMSAN:運動+感覚神経の軸索障害
*軸索障害型GBSC.jejuni感染の関連が強く示唆される。

[病態]
ウイルスや細菌感染が契機となって引き起こされる自己免疫疾患。

髄鞘の構成成分である糖脂質(主にガングリオシド)に対する抗体。

[疫学]
1/ /10万人。
平均発症年齢は約40歳。
3:2とやや男性に多い。
70%に先行感染(上気道炎、胃腸炎)を伴う。
病原体としてはC.jejuni, CMV, EBV, Mycoplasmaが多い。

[症状]
前駆症状から数日で進行、4週間以内にピークに達し、その後回復する。
四肢の弛緩性麻痺・DTR低下を主徴とする。
下肢筋力低下で発症し、上肢へ拡大する。
多くは脳神経麻痺を伴う(顔面神経:50%, 球麻痺:30%, 外眼筋麻痺:10%
多くは手袋靴下型の感覚障害を伴う。
約半数で自律神経障害(不整脈・高血圧・起立性低血圧)を伴う。
発症初期には大腿・臀部・腰背部の疼痛を伴うことがある。
重症例では呼吸筋障害をきたし、人工呼吸器装着となる。

[診断基準]
GBSの診断基準
1.    必須
(1)  2部位以上の進行性筋力低下
(2)  腱反射消失

2.    強く指示する所見
(1)  臨床所見
    進行性:4週間までにピークを迎える
    比較的対称性:左右差はあれど、両側の障害
    軽度の感覚障害
    脳神経障害(顔面神経:50%, 球麻痺:30%, 外眼筋麻痺:10%
    回復:症状進行停止から2−4週で回復始まる。
    自律神経障害:不整脈・起立性低血圧・HT
    神経症状発症時には発熱をともなわない。
[亜型]
    神経症状発症時の発熱
    痛みを伴う感覚障害
    4週を越える進行
    回復なく後遺症を残す
    括約筋障害
    中枢神経障害
(2)  髄液所見
    髄液蛋白の上昇:経時的にも上昇をきたす
    髄液細胞数の上昇:10/mm3以下の単核白血球
(3)  電気生理所見
神経伝導速度の低下・神経伝導ブロック(伝導速度は60%未満まで低下)
3.    否定的な所見
著しい非対称性の筋力低下、持続性の膀胱直腸障害、髄液単核WBC>50
髄液中に多核WBC, ヘキサックカーボン中毒、急性間欠性ポルフィリン症
ジフテリア、鉛ニューロパチー、純粋な感覚障害のみ、ボツリヌス感染
中毒ニューロパチー、灰白脊髄炎

[検査所見]
1.血液検査
ガングリオシドに対するIgG抗体が特徴。
GM1抗体(30%)、抗GM1b抗体(30%)、抗GD1a抗体(20−30%)
GalNAc-GD1a抗体(10−20%)、抗GDb抗体(20%)
GQ1b抗体・抗GT1a抗体(Fisher synd以外では10%)

2.髄液検査
蛋白細胞乖離:発症1週間後以降に髄液蛋白上昇

3.神経伝導速度検査
発症2週間以内では判別が困難である。
GBSにおけるNCSの分類基準)
1.脱髄型:発症2週間以内に2つ以上の神経で1つ以上の所見
(1)  CMAPamplitudeが正常下限の50%以上→velocityが正常下限の90%未満
CMAPamplitudeが正常下限の50%以下→velocityが正常下限の85%未満
(2)  CMAPamplitudeが正常でdistal latencyが正常上限の110%以上
CMAPamplitudeが低下でdistal latencyが正常上限の120%以上
(3)  明らかな時間的分散
(4)  最短F-wave latencyが正常上限の120%以上
2.軸索型
(1)  脱髄型の所見がない
(2)  CMAPamplitudeが正常下限の80%未満

[鑑別診断]
ビタミンB1欠乏(脚気)ニューロパチー、MG、多発筋炎、周期性四肢麻痺
ヘキサックカーボン中毒、急性間欠性ポルフィリン症
ジフテリア、鉛ニューロパチー、ボツリヌス感染
中毒ニューロパチー、灰白脊髄炎
[重症度分類]
Hughes’s functional grade
Grade 0: normal
Grade 1: 軽微な神経症状
Grade 2: 独歩で5mの歩行が可能
Grade 3: 支持があれば5mの歩行が可能
Grade 4: 支持があっても5mの歩行が不可能
Grade 5: 補助換気を要する
Grade 6: 死亡

[治療]
有効性が確立されている治療はPEIVIgである。
現時点でどちらか一方の優位性を示すエビデンスはない。
発症7日以内の治療が推奨される。
1. 単純血症交換(Plasma exchange: PE)
40ml/kgの血漿交換を行う。
置換液にはアルブミンを用いる。(FFPはダメ)
Grade2以下であれば2回、Grade3以上であれば4回施行する。
副作用:血圧低下
禁忌:高齢者、小児、BW<40kg, 循環不全、不整脈等の自律神経障害、感染

2. 免疫グロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin: IVIg)
→グロベニンI, ヴェノグロブリンIH
400mg/kg/day 4-6時間かけてDIV 5days
初回投与時には最初の1時間は0.6ml/kg/hrで投与。
副作用ないことを確認して、1.8ml/kg/hrに加速。
2日目以降は1.8ml/kg/hrで投与。
禁忌:免疫グロブリン製剤に対するアレルギー歴
新調投与:IgA欠損症、腎機能障害、血栓症のリスク高い

二重膜濾過血漿交換(DFPP), 免疫吸着(IAPP)はエビデンスに乏しい。
ステロイドの有効性は否定されており、単独での使用は避ける。
IVIgとステロイドセミパルス併用療法ではIVIg単独より治療効果に優れる。

  呼吸筋麻痺
呼吸不全の自覚症状があれば呼吸機能検査・血液ガス分析を繰り返し施行する。
努力肺活量<20ml/kg以下 or PaO2 <60mmHg or PaCO2 > 50mmHg
の時は気管内挿管を行い人工呼吸器管理とする。
人工呼吸器管理が1ヶ月以上持続する場合には気管切開を行う。

  補助治療
補助治療としてビタミン製剤を3ヶ月間投与する
ユベラ・メチコバール 3Tx 3ヶ月

[合併症]
1. 肺炎/UTI
呼吸機能不全・排尿障害により感染をきたす可能性がある。
臨床症状および炎症反応を適宜確認する。

2. 尿崩症・SIADH
尿量・血液検査での電解質・尿浸透圧など適宜確認する。

3. DVT
長期間の臥床により血栓症をきたす可能性がある。
弾性ストッキングの着用が推奨される。

4. 疼痛
発症初期には大腿・臀部・腰背部激痛を認めることがある。
非麻薬性鎮痛薬→麻薬性鎮痛薬で対処する。
回復過程においても神経再生に伴って疼痛を自覚することがある。
運動で増悪するためリハビリテーションの妨げになる。
鎮痛薬・抗鬱薬・抗けいれん薬で対処する。

5. 再発
再発型GBSは初期治療と同様の治療で改善を認める。
CIDPとの鑑別が必要である。

[予後]
多くは6か月以内に自然治癒する。
発症1年後に約10%は死亡、約10%は自立歩行不可能。
走ることができるまで回復した例は約60%。

予後不良因子
(1)  高齢者
(2)  先行感染が下痢
(3)  発症・ピーク時に高度の麻痺(特に呼吸筋麻痺)
(4)  神経伝導速度検査で軸索障害

[亜型]
1.    Fisher症候群
外眼筋麻痺, ataxia, DTR消失を主徴とし、抗GQ1b抗体陽性。
(診断基準)
発症4週以内でピークとなる外眼筋麻痺、小脳運動失調、腱反射消失/低下
前駆症状
血清中IgGGQ1b抗体陽性
髄液蛋白細胞乖離
  高度な意識障害・錐体路徴候・左半身感覚障害を伴う場合は
ビッカースタッフ型脳幹脳炎と診断する。

2.    純粋運動型GBS
感覚障害をともなわない。

3.    咽頭・頸部・上腕型GBS
咽頭・頸部・上腕に感覚障害が限局する。
(診断基準)
発症4週以内にピークとなる咽頭・頸部・上腕型の脱力、腱反射消失/低下
髄液軽度蛋白上昇
神経伝導速度検査では上肢F波の障害、反復刺激での変化なし。

4.    対麻痺型GBS
両下肢に限局した筋力低下をきたす。
(診断基準)
発症4週以内にピークとなる下肢脱力、腱反射消失/低下
上肢・脳神経障害・感覚障害なし(あっても軽度)
髄液蛋白軽度上昇
神経伝導速度検査で運動神経伝導速度、F波が下肢で

5.    Facial diplegia with paresthesia
(診断基準)
発症4週以内にピークとなる両側末梢性顔面神経麻痺、腱反射消失/低下
手袋靴下型の感覚障害
いずれの腱反射低下、四肢筋力はほぼ正常
顔面以外の感覚障害なし
髄液蛋白軽度上昇
末梢神経伝導速度検査で異常(運動神経or感覚神経)


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